暁の奇襲
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ある。現地であの化け物を目撃した者達はその警戒を強めていたが、それを知らない大多数の艦娘達が『大したことないんじゃね?』と楽観的に考えていたからだ。現役の提督の中でも殊更に厳しい訓練を課すことで有名な提督の下で鍛えられた自負があった……しかしそれは時に、『慢心』へと繋がるというのに。
「私個人の見解を言わせてもらえば……来るね、絶対に」
そんな中、数少ないネームレベルを実際に目撃した事のある川内はそう断言した。
「奴の目的は恐らく、こっちの航空戦力の壊滅。たった一騎で……と思うかも知れないけど、アレは私達の知っている深海棲艦とは規格外の化け物。出来ないとは言い切れない」
「でも、それが鎮守府を襲うのとどう関係が?」
詰所にいた駆逐艦の1人が疑問を呈した。
「それこそ、真珠湾攻撃と同じでしょ。わざわざ敵が殺意剥き出しの時に襲う必要は無い。寝込みを襲うのが一番簡単なんだから。それにウチはこの辺で一番の規模を誇る鎮守府だよ?だからこそ狙われる可能性が高い」
そう言って川内は黙り込み、コーヒーを黙々と啜る。何かは解らないが、チリチリと肌を刺激してくるような物を感じて知らず知らずの内に焦燥感に駆られている……そう自己判断を下す。
……そしてそれは、気のせいではなかったのだと間もなく証明される事になる。
-AM5:30 『Bar Admiral』店内-
「いやぁ、今日も稼いだなぁ」
「……お疲れ様です、店長」
客の居なくなった店内で、閉店の為の最後の後片付けをこなす店主とその助手。知っての通り店主はこの鎮守府の提督であり、助手はこの鎮守府に所属する駆逐艦『早霜』。コンビを組むようになって数年、2人の間には少なくともこの店内では上司と部下という関係性は消え失せていた。
「しっかしまぁ平和だねぇ……」
「ふふふ、ダメですよ?ネームレベルに狙われているんですから……」
「わ〜ってるさ。ただな、ここまで平凡な日々が続くと張り詰めていた気も弛んでくらぁな」
そう言って提督はポケットにしまってあった煙草を取り出して咥えると、コンロで点火してぷかりとふかす。
「あ、残り1本しかねぇや。起きたら買ってこねぇとな……」
妙に軽かった煙草の箱を覗き込み、ぼやく提督。もうすぐ就寝するという、気の抜ける時間……そんな静寂をけたたましいサイレンの音が破った。
「な、なんだァ!?」
「これは……空襲警報!?まさか!」
バタバタと窓際に駆けていく早霜が窓を開け放つと、港湾部の方に機銃掃射の光の帯が無数に見えた。総員起こしが掛かる少し前、夜警の人員も気を許す時間帯を、奴等は……否、『奴』は狙っていたのだ。
「野郎……やりやがった!」
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