脱皮
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さはある。後は抗う強さだけだ」
「抗う強さ・・・・・・」
男の言葉はカナの何かを変えていく。足りないものを全てカナに突き付けているかのようだ
「本当に失いたくないものだけを手放さずに済むように、その方法だけを考えろ。さあ、どうする?大事なものを失わない為の強さを得るか、自分を守る為に弱いままでいるか。二つに一つだ」
しかし、それは確かにカナの覚悟を固めさせた。名前も知らぬ同族の言葉がカナを変えたのだ
「私は・・・・・・戦うわ。強くなる。ハルもレツも、ナルも失いたくない」
「良い表情(かお)だ・・・・」
しかし、カナは先程彼が言った言葉を忘れてはいない。もう二人はいないと思い込んでいた
「でも、ハルたちはもう」
「安心しろ。二人は向こうで俺の部下が見ている」
男が一つの方向を指差す。カナが白眼で彼が指差した先を見てみれば確かに二人は数人の暗部が見張っていた。安心したようにホッと息を吐く
「ありがとう」
「礼はいい。だが、もう見誤るなよ。さあ、さっさと行け」
カナは頷くと立ち上がり、二人がいる方へと向かっていく。その眼には強い覚悟が見て取れる。暗部の男はカナが去っていった方向を見ながら一人でに語り出す
「ある女は自身の子供を守る為に国に叛旗を翻そうとした。結局、その人は失意の中で死んでしまったが・・・・その子供は生き延びた。彼女は自身の命を捨ててまでも、宝を守ったのだ」
「彼女の事を裏切り者と呼ぶ者もいるだろう。しかし、誇り高き死を遂げた者として彼女を見る者もいる」
彼は仮面を外す。額には日向の人間である事を示す籠の鳥の印がある
「あんな風に言っておいて何だが、お前たちが同じ道を歩むことのない事を願っている」
柔和な表情を浮かべながら彼は一人呟く。その柔和な表情は仮面に再び隠されてしまうが、その声は穏やかに、ここにはいない誰かへの言葉を発していた
「さて、貴女に何と報告すれば良いのか」
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