519部分:第三十話 ワルキューレの騎行その十八
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です」
その侍従アイゼンハルトが肩で息を切らしながら話す。
「我が父なるドイツがです」
「フランスに勝ったのか」
「このままパリに迎えます」
「そうか」
それを聞いてもだった。王は。
暗い顔でだ。応えるだけだった。
そしてだ。馬から降りてだ。こう侍従に述べた。
「風呂の後でだ」
「風呂で?」
「そう、風呂の後でだ」
こう言うのである。
「ワインが欲しい」
「あの、ですから」
「話は聞いた」
戦勝報告、それはだというのだ。
「ではこれでいいな」
「これは喜ばしいことだと思いますが」
侍従は王の無関心そのものの態度に立つ瀬がなくなった顔で返した。
「それでもですか」
「わかっていることだ」
プロイセン、即ちドイツが戦争に勝つことはだ。
「それはだ」
「だからですか」
「後はいい」
こう言ってだった。王は侍従にまた話した。
「風呂とワインの用意を」
「しかしです。ドイツは勝っているのです」
「プロイセンがだな」
「ですがそれでも」
「いいのだ。それではだ」
強引に話を終わらせてだった。王は。
馬をなおさせそうしてだった。風呂に入り汗を流しだ。
自分の部屋でワインを飲む。そうして一人言うのだった。
「この世は。何故これ程辛いのだ」
こう呟きだ。憂いに満ちた顔になっていた。昼の輝かしい光の中で。王だけが憂いに満ちた顔になっていた。
第三十話 完
2011・9・23
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