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戦国異伝供書
第二十一話 天下布武を固めその十

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 そうして切支丹のことも考えていくことにした、そのうえで今は信濃を北上しそこから今度は上杉謙信との戦に赴くのだが。
 信長はこの時も兵達の言葉を聞いた、それは相変わらずのものだった。
「武田には勝ったがな」
「ああ、信じられぬがな」
「しかし今度はどうだ」
「相手は上杉謙信だぞ」
「戦で負けたことはないのだぞ」
「まさに毘沙門天の化身じゃ」
 謙信がよく言われていることを話すのだった。
「戦になれば無敵」
「誰も勝てぬぞ」
「武田信玄でようやく分けた」
「我等も引き分けだった」
「今度も勝てぬのではないのか」
「下手をすると負けるぞ」
 それこそというのだ。
「そうなるぞ」
「相手が悪いにも程がある」
「大丈夫なのか」
「武田家の時の様に上手くいくか」
「また鬼の様に攻めてくるというのに」
「果たしてどうなるか」
 彼等は武田家と戦う前の様に自信がなかった、そうした状況を見て聞いてそうしてだった。信長は言った。
「さて、この度の戦でもな」
「殿は勝たれますな」
「上杉謙信に対しても」
「そうされますな」
「無論じゃ」
 当然という返事だった。
「勝ってじゃ」
「そしてですな」
「そのうえで上杉家も降し」
「北陸全土を領地とする」
「そうもされますな」
「それは常に言っておる通りじゃ」
 この行軍の間そうしていることと同じというのだ。
「まさにな。それでじゃ」
「はい、では」
「この度の戦でもです」
「勝ちましょうぞ」
「何としても」
「必ずな、あと兵達は言わせておくが」
 勝てるかどうかという不安に感じる言葉をというのだ。
「士気を高める為にな」
「美味いものをふんだんに食わせ」
「酒も飲ませますな」
「そうして楽しませ」
「また他のことでもですな」
「舞曲も奏でさせてやれ」
 そちらでも楽しませよというのだ。
「そうしてな」
「勝てるかどうか不安な兵達の士気を上げ」
「そのうえで、ですな」
「戦に向かわせる」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 まさにと言うのだった。
「だからな」
「兵達にあえて言わせておく」
「このままですな」
「どうせ人の口を塞ぐことは出来ぬのじゃ」
 それならというのだ。
「そうして楽しませて士気をそのままにする、そしてわしが采配を採ることを広く伝えるのじゃ」
「殿がですな」
「これまでの戦に勝ち続けた殿ご自身が采配を採られる」
「そのことをですな」
「そうじゃ、そのことを広く伝えてじゃ」 
 今率いている軍勢にというのだ。
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