515部分:第三十話 ワルキューレの騎行その十四
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第三十話 ワルキューレの騎行その十四
「だがミュンヘンの者達はそれがわからなかった」
「それ故にワーグナー氏を追い出した」
「だからワーグナー氏はバイロイトに向かった」
「そうなったのですか」
「そして私も城は築く」
「?しかし」
ここでホルニヒは気付いた。あることにだ。
自分以外にも誰かが王に問うている。そのことに気付いた。
それで周りを見回す。しかし誰もいなかった。彼はそれを気のせいだと思った。
そのうえで王に顔を戻す。見れば王は何も驚くものはない。それを見てだ。
彼はあらためて自分の気のせいだと思った。それでだ。
王にだ。また問うたのだった。
「ノイシュヴァンシュタイン城ですね」
「他にはヘーレンキムゼー、リンダーホフ」
城の名をだ。王は挙げていく。
「私の夢をそこに築く」
「そうされますか」
「そうだ。そうする」
また言う王だった。それでだった。
ミュンヘンについてだ。また言ったのだった。
「芸術の都でなくなり。心臓でもなくなるミュンヘンはだ」
「陛下にとっては」
「ワーグナーを追い出した町でしかない」
王にとっては苦い思い出であるだ。それだというのだ。
「私自身もよく言われている」
「新聞の言うことは御気にされない方が」
「わかっているがどうしてもだ」
それができない。王のその性格故にだ。
だからだと話してだった。王は。
ミュンヘンを離れ。そうしてだというのだ。
「私は。この世からも離れたい」
「ノイシュヴァンシュタインに入られますか」
「全てはベルリンの下に一つになる」
王の憂いはここにもあった。
「バイエルンはその中に埋没していくのだから」
「他の国もですね」
「同じだ。プロイセンはそのままドイツになる」
「そしてドイツがプロイセンになるのですね」
「ドイツにある他の国もだ」
そうなっていく。プロイセンになっていくというのだ。
そのことをビスマルクと同じだけわかっている王は。それでだった。
虚しいものを感じてだ。王は述べた。
「私は。現実の世界にいたくはなくなってきた」
「しかしそれは」
「わかっているのだが。それでもだ」
こうした話をするのだった。そうしてであった。
王は戦いの成り行きにもこれといって興味を見せなかった。それはだ。
乗馬に出る時にだ。王にだ。
侍従の一人が来てだ。報告してきた時もだ。
「何かあったのですか?」
「はい、朗報です」
駆けて来た侍従は喜びと共に肩で息をしながらだ。王に手にしている電報を読みあげてきた。
「アルサスですが」
「あの場所がですか」
「はい、陥落しました」
満面の笑みでだ。侍従は王に述べる。
「ドイツ軍の大勝利です」
「わかった」
「
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