511部分:第三十話 ワルキューレの騎行その十
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第三十話 ワルキューレの騎行その十
「ドイツの英雄になるのです」
「このドイツ全体の主人公」
「それになるというのですか」
「彼は」
「そうです。なります」
また言う王だった。
「彼は」
「ではワーグナー氏はその英雄の父となるのですね」
「あの彼が」
「そうです。ワーグナーはそうした存在まで生み出します」
まさにだ。そうだというのだ。ワーグナーは。
「彼はそうなのです」
「左様ですか。あの方はそこまで」
「そうしたものまで生み出す」
「芸術だけでなく」
「ドイツの英雄までも」
「モーツァルトもベートーベンもできなかったことです」
その偉大なだ。彼等ですらだというのだ。
「彼はそれをするのです」
「ではワーグナー氏はドイツの象徴ともなるのですね」
「ジークフリートと共に」
「やがて彼は」
王は未来も見た。それを。
そしてだ。彼等に話すのだった。ドイツ人の彼等に。
「ドイツの聖者、音楽の守護神ともなるでしょう。そう」
「そう?」
「そうとは」
「ドイツを心から愛しそのドイツと結婚したとまで言う男」
まだ彼はこの世に出ていない。しかしだ。
王は既にだ。その存在を予感して言うのだった。
「その彼がドイツを統治する様になれば」
「そうなればですか」
「ワーグナー氏はさらに偉大になる」
「ドイツの聖者」
「音楽の守護神に」
「彼がそうなるのは」
何によってか。わかっているからこその言葉だった。
王はだ。言えた。
「歌劇によってですがとりわけです」
「指輪によってですか」
「その偉大な四部作からですか」
「今第一夜が終わった」
「その通りです。英雄を生み出したこの歌劇によって」
ニーベルングの指輪。まさにそれによってだ。
そう話してだった。王はこれから現われるジークフリートの話をした。そのうえでだ。
舞台の余韻に浸っていた。今王は幻想の中にいた。
しかし次第に現実に戻る。それに対して。
王はだ。辛い顔で。こう漏らした。
「苦痛です」
「苦痛ですか」
「今は」
「はい、苦痛です」
そうだとだ。王は漏らすのだった。
そうしてだ。その苦痛を肌で感じながら。
王は現実に戻った。その王に対してだ。
政治が来た。それは追うの最も嫌う戦争だった。
その戦争の状況はだ。どうなっていたかというと。
次から次にだ。プロイセン圧勝の報が入る。その中にはバイエルン軍に関するものもあった。
バイエルン軍もだ。ドイツの一国として戦い。
そしてだった。果敢に戦い勝利を収めていた。
王にそれを報告する者達は満面の笑顔だ。その笑顔でだ。
王に報告する。その勝利を。
「プロイセンは勝ち続けています」
「信じられない勝利の連続
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