主役だと言い張れる話 前編
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にした。
その後は簡単な自己紹介を経て、旅に必要な物資の調達、今後の旅路の確認などを行なった。
旅なんてものは初めてだし、なんなら特定の集団で寝食をともにするのも学生時代以来だったから、正直かなり不安だった。やめておけば良かった、という考えだって浮かんだぐらいだ。
それでも、好きな女性に頼られて断れるかい? 俺は無理だったね。
旅の支度を整えて、街の出入り口へと向かう。一度だけ、俺は街を振り返ってみた。
退屈な日常ばかりで、いいことなんてあんまりなかった。けど、数年も住んでいた街を出ることに、少しばかりの哀愁も覚えていた。
次にこの街に帰ってくるとしたら、そのときはかなりの知名度になって帰ってくることになる。それぐらい、敵は危険な相手だった。成功する姿なんて、ほとんど想像がつかなかった。だから、帰ってくることはないんだろうな、と、ぼんやりと思っていた。
あまり恐怖心がなかったのは、あくまでもぼんやりと思っていただけだっていうのと、自分の命と人生に、もはやそんなに価値を見出せなかったせいだ。死んだら死んだで、まぁいいか、って感じだ。
「行きましょう?」
彼女に声をかけられて、俺は街の外へと一歩を歩みだした。
──結論から言えば、街に帰ることはなかった。けど、死んだわけでもなかった。
何があったかは、聞いていれば分かるさ。
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