主役だと言い張れる話 前編
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
や脚を露出させた格好の女。腰には道具袋とナイフの入った鞘をくくりつけていた。分かりやすく言えば、盗賊の格好だ。燃えるような赤い髪が短く整えられていた。その女は俺を見ると、一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに元に戻した。ベッドには、金髪碧眼の剣士。椅子に座っている男よりも、動きやすさを重視した鎧を身につけている。その代わり、足元には大きめの盾が置かれていた。攻防のバランスの良い装備、といったところだ。
「この人が、今日から入る新しい仲間です」
「……よろしくお願いします」
彼女の推薦に泥をつけないためにも、努めてまともな声を出そうとした。多分、気弱そうな印象を与えるのが精一杯だっただろう。
戦士の男はため息をつき、盗賊の女はベッドに座る男に目配せ。俺を連れてきた治癒術師の彼女も、同じようにベッド側の男を見ていた。どうやら彼がリーダーらしい。
「本当にこいつで大丈夫なのか?」
最初に口を開いたのは戦士の男だった。不満を隠そうともしていなかった。
「彼女の推薦だ、僕は信じるよ」
剣士の男が優しげな口調で告げ、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
俺は一瞬でこいつが、この剣士の男が嫌いになった。自分のことを疑っている男よりも、嫌そうな顔を見せた女よりも、自分を庇った男のことが嫌いになった。
何故か。好意を持った女性と明らかに深い仲であることを察したからじゃない。
──直感だった。この男は、俺と何もかもの相性が悪い。光と影が決して混ざり合わないように、空と大地がかけ離れているように、俺はこの男と絶対に分かり合えないと、そのときに理解した。
幸いにも内心を隠すのは得意だったので、嫌悪感が表に出ることはなかった。
「よろしくお願いするよ」
剣士の男は俺に歩み寄ると、片手を差し出した。一瞬だけ間を置いた後、俺はその手を握った。
「まぁ、お前らがそう言うんならしょうがねえや。ちゃんと戦えるかは、見てれば分かるしな」
戦士の男はあっさりと納得した様子だった。見た目どおり、細かいことにはこだわらないのだろう。
「あたしは、どっちでもいいよ」
女の方はというと、興味のない感じではあった。ただ、どちらかというと不満はあるが言い出せない、という方が正確なのだろう。
この段階で俺はこの集団の人間関係にある程度の予測を立てていた。大方、リーダーである剣士の求心力でもっているような一団だ。彼が死ねば、一瞬で瓦解するだろう。
彼らは俺の実力と人間性が不安だったようだけど、俺も同じような感想だった。強力な魔法使いに、果たしてこんな集団で勝てるのだろうか。
とはいえ、負けるということは、自分も死ぬということだ。そして彼女も死ぬということだ。だから残念ながら、今更やめることはできなかった。
まぁでも、案外なんとかなるものさ。そう楽観視すること
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ