主役だと言い張れる話 前編
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がギルドに所属していたとき、純粋な魔法使いは俺だけだった。あとは剣士や治癒術師といった別の能力を持った人ばかりだった。だから、選択肢が他になかったのだろう。
これは千載一遇のチャンスだった。とてつもない幸運だと言っていい。好意を抱いていた女性が、他に魔法使いがいないというだけで自分を頼ってくれたのだから。どう考えたって、ラッキーだろう?
……と、そう考えられたら、俺の人生はもっとずっとまともなものになっていただろうな、と思う。実際、このとき俺が考えていたのは、全く別のことだった。
つまり、どうして俺なのだろう、と。いくらギルドでは自分しか魔法使いがいないとはいえ、旅の道中など他にいくらでもマシな魔法使いがいただろうに、どうして俺なのだろう、と。
理由はさっき言ったことしか存在していないのに、強欲にも、傲慢にも、俺は俺でなくてはならない理由を探していた。自分の実力を認めてくれているだとか、人柄を認めてくれているだとか、だ。彼女が真の意味で、俺を必要としてくれていると、思いたかったからだ。
馬鹿げていると思うだろう? 俺もそう思うよ。本当に、馬鹿げている。
けど、一箇所だけ俺の頭は働いた。彼女に対して、“どうして俺なんですか”とは聞かなかった。心のどこかで、本当に俺でなくてはならない理由がないことに、気がついていたからだ。もしもこういった質問をして、自分でなくても良いのではないか、などということを言おうものなら、彼女はきっとすぐに手を引いただろう。俺が、仲間に加わることを望んでいないだろうと考えて。
だから、それだけは言わなかった。そのことは振り返ってみても、ちょっとは褒めてやってもいいような気がする。
「……分かりました。お受けします」
そういった馬鹿げた思考の果てに、俺は返事をした。緊張した面持ちだった彼女の表情が、一転して大きな笑顔となった。
「あ、ありがとうございます!」
彼女は俺の手を取って、何度もお礼を言ってくれた。正直、かなりいい気分だった。女の人に手を取られるのも初めてだったしね。
その日は一旦別れて、翌日に仲間と引き合わせることになった。何かいいことがあるんじゃないか、という予感が勝手に浮かんできて、その日は少し寝付けなかった。
そう、予感だ。もう大体、分かるだろう?
人生にいいことが一つもない、とは言わない。でも、そんなに都合のいいことは沢山は起きないもんだ。
次の日。彼女は俺を仲間の元へと案内した。
連れて行かれたのは宿屋の一室。備え付けの椅子に屈強な肉体を鎧で固めた男が座っていた。背中には巨大な斧。見るからに力自慢の戦士だ。俺のことを見定めるように眺めてきていた。壁際には腕
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