異世界に馴染んでしまったあたりの話
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れも、異世界でだって一緒だ。
そう、これが唯一残った大きな問題。学生っていう地位が手に入って、寮という住処が与えられて、異世界での食事が身体に合っていたとしても、そこにいる人々と上手く交流をしなきゃいけなかった。
そして、それが俺にはかなり難しかった。どうしてかって? それに答えるのも難しいな。
直接的には答えられないから、こういう質問を投げ返そう。じゃあ逆に、どうして他の人たちと話すときに、何も困らずに会話ができると思う?
これに答えられたら、俺も楽だったんだけどね。
次の日からは早速、授業が始まった。
どんな風だったかって言われると……そんなに変わったことはなかったよ。教師が前にいて、学生が椅子に座って机に紙を広げて、教師の言うことをメモしたり、指示された作業をしたりするんだ。
そう、元いた世界と何も変わらない。予想どおりってわけだ。
違っていたのは、もちろん、その内容だ。さっきも言ったとおり、教えられる内容は全然違っていた。気分はどうだったかって? 初めは良かったよ。
その話をするより先に、実技の方を話そう。座学をある程度やった後には、実際に魔法を使うっていう時間があった。一番の目当てってわけさ。
初めて炎を杖から出せたときは、それは感動したもんだ。他の学生たちも同じような様子だったし、俺も楽しかった。最高の瞬間だったね。
──けど、その時間はあまり長く続かなかった。
人間ってのは勝手なもので、どんなに興奮する体験をしても、それが一ヶ月や二ヶ月も継続すると、慣れて、飽きちゃうんだよね。
俺も全く同じで、そんな生活を二ヶ月も続けた頃には、すっかり慣れてしまっていた。そうなったら大変さ。だって、慣れてしまえば元いた世界と変わりがないんだから。
半年もする頃には色んな嫌な部分も見えてくる。学生同士の飲み込みの差や、魔法に対する才能の差。教師との相性、友人関係の良し悪し、成績の良し悪し──問題が山積みだ。
自分の立ち位置はどうだったかっていうと、平凡だった。成績は中の下、問題は起こさないが優秀でもないから教師は覚えてさえいない。友人はあんまりいなくって、たまに話す相手が2、3人いるだけ。
学校っていう場所で生活するのに必要な最低限のものだけ揃ってる、そんな感じだった。
授業が終わった後の自由時間も、気まぐれに勉学に充てるか、部屋で関係ない本を読んでるかのどっちかだった。友達と遊ぶっていうことは、難しかった。一度、人間関係の輪から溢れた人間は、そう簡単にはその中に入れないからね。これも、異世界で変わっていないことの一つだった。
こうやって聞くと、何か新しいことを始めなかったのかって、思うかもしれない。例えば街に出て、元の世界にはなかった何かを知ったり、始めたり、あるいは、他の人と
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