異世界に来たばかりのときの話
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浮かべていなかった。
安心した俺は心の中で大喜びだった。当たりを引いたわけだ。これから異世界での生活が、ちゃんと始められるんだって思って、期待に胸を膨らませていたよ。
施設に案内してくれた男性は、「じゃあ、頑張ってください」とだけ言ってすぐに立ち去った。少し不安になったけれど、とにかくその中に入っていった。
中は……なんというか、ごちゃごちゃしてたな。大きな部屋のような構造で、手前側は待合室というか、椅子がたくさんあった。奥側には窓口みたいに机と係りの人がいて、たくさんの人とやりとりをしていた。
その様子はまるで役所みたいで……あぁ、うん。こっちのいた世界の役所みたいで、正直、がっかりしたな。
入り口で突っ立ってた俺に制服っぽい格好をした女性が声をかけてきた。「異世界からいらした方ですか? 援助希望の方ですか?」
「えっと、異世界からきました……」
俺の答えを聞いた女性は「こちらへ」と言って紙の置いてある机に案内した。
「こちらに必要事項をお書きになって、あちらの窓口に出してください」
そう言って、呆然とする俺を置いてまた出入り口の方へと戻っていった。
そりゃ、呆然としたさ。元の世界と何にも変わらないんだから。支援が受けられるって聞いて、俺が想像してた施設は役所じゃなくってギルドだったからね。もっとこう、違ったものを想像していたんだよ。
記入用紙はいくつかの言語で書かれていた。幸いというか何というか、俺の使っていた言語でも書かれていた。だから、書くのは問題なかった。氏名と年齢と性別と、いくつかの項目を書き入れていった。
質問みたいなのも書いてあって、それは結構、面白かったよ。いくつかの例が書いてあって、自分がどれに当てはまるのか答えるのさ。例えば、“自分の身体の一部は、動物と同じところがある”、とか、“魔法が使える”、とかね。どうやら、そのへんの答えで人種や文化レベルの分類をしてるみたいだった。
それを窓口に提出して、番号札をもらった。読み方が分からなかったけど、係りの人が予め教えておいてくれた。で、数分後に呼び出された。
「ようこそいらっしゃいました、私たちの世界へ」
「……どうも」
歓迎の言葉はそんなに感情はこもってなかった。店員の、いらっしゃいませ、みたいなものさ。
「これから貴方に支援金を差し上げます。また、しばらくの所属先を選んでいただきます」
そう言って係りの人は表のようなものを取り出した。説明を要約すると、いきなりこの世界の社会に放り出しても困るだろうから、職業訓練校のようなところに行かせてくれる、ということだった。いける先も、騎士学校やら何やら色々あった。
ここで、凹んでいた心がちょっと持ち直した。見た目は完全に役所そのものだけど、やっぱり異世界じゃないかってね。学校なんてもの
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