異世界に来たばかりのときの話
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にイベントが起きるとは思ってなかったから。二つ目は、相手が普通の、まともそうな人に見えたから。声をかけてくるとしたら、奴隷商とか、いかにもやばそうな人間が相手だろうと思っていたんだ。そして三つ目は──これが一番大きい理由。笑える話だけど、俺はかなり人見知りだったのさ。
「え……あ……」
何か言おうと口を開いたけど、出てくるのは声にもなってない掠れた音。典型的な、人付き合いになれていないというか、話すのが苦手な人間の反応。まぁ、実際そうだったから、仕方がないんだけど。
そんな俺を見ても、相手の人は大して困惑する様子もなく、親切そうな笑顔を浮かべていたよ。理由は、この後のやりとりで後から分かった。
「もしかすると、ここがどこだか分からない、というような状況ではないですか?」
「え……?」
驚いたよ。なんで分かったんだろう、って。一瞬してから、自分の格好を思い出した。異世界人の格好なんて、文化が全然違うから、風変わりに見えるからね。
けど、それでもまた、おかしい、と思った。こっちにだって外国やら異文化やらあるだろうし、変わった格好をしているからって、“ここがどこだか分からないと思っている”、なんてことを言い当てるなんて不可能だろう?
何を言えばいいか、すっかり分からなくて頭の中はパニックさ。その様子を知ってか知らずか、相手の人は続けた。
「もしもそうでしたら、あちらの建物に行ってください。貴方のような異世界からいらした方を助ける施設がありますので」
その人は少し離れた場所にある、背の高い建物を指差していた。そのときの俺は、きっと、まだ分かっていないような顔をしていたんだろうね。「ついてきてください」と言って、その人は建物へと向かっていった。状況の急展開に頭が真っ白になっていた俺は、とにかくついていった。
その人の後ろを歩きながら、少しずつ頭の中を整理していった。つまり、考えられる状況は二つだった。
一つは、この人がかなり親切な人で、異世界人をフォローする施設とやらが本当にあって、この世界は結構、俺みたいな人間に手厚いっていう状況。
もう一つは、見た目によらずこの人はやっぱり奴隷商で、行った先で捕まって売り飛ばされたり、あるいは殺されたりするっていう状況。
天国行きか地獄行きかの二択だった。結論としては、二番目の状況じゃなかった。
その施設とやらに近づくにつれて様子が分かっていった。その建物は結構大きくって、入り口じゃいろんな人が行き交っていた。獣人とか、亜人種も結構いたっけな。
それを見て、俺は安心した。あれだけ色んな人々が出入りしてるんなら、奴隷商の怪しい拠点ってことはないだろう、ってね。もちろん、この街全体が奴隷商に支配されてるっていう説を否定はできなかったけど、どうにも行き交っている人々がそういう表情は
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