505部分:第三十話 ワルキューレの騎行その四
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第三十話 ワルキューレの騎行その四
王はだ。また述べた。
「それだけのことなのです」
「感情、反感だけでというのですね」
「彼等はプロイセンとビスマルク卿を否定している」
「それだけだと」
「そうです。彼等はドイツを見てはいません」
ひいては考えてもいないというのだ。
「自分の気が済む様にしたいだけです」
「だからこそホーエンローエ卿をですか」
「更迭したい」
「それだけですか」
「何度も言いますがホーエンローエを更迭しても」
彼等の問題のだ。根本的な解決にはならないというのだ。
それは何故かというと。やはり問題はバイエルンにはないからだ。
プロイセンにある。それこそがだった。
「ビスマルク卿はいますし」
「そしてプロイセンもですね」
「どちらも」
「そしてあの方は私がないのです」
ビスマルクにだ。それはないというのだ。
「あくまでドイツのことを考えておられます。そう」
「そう?」
「そうと仰いましたが」
「そう、私よりも」
王自身よりもだ。ビスマルクはドイツのことを考えているというのだ。
そしてだ。王は言うのだった。
「私は所詮は自分だけです」
「御自身だけ」
「いえ、それは」
「いえ、私はそうなのです」
己を否定してだ。王は言っていく。
「私の望む城を築き劇を楽しむのですから」
「いえ、それは誰もがです」
「己のことを考えるものです」
「それはビスマルク卿も同じでは」
「そう思いますが」
「いえ、違います」
また言う王だった。
「私はあくまで自分だけなのです」
己を、鏡の己を見てだ。王は言う。
今ここには鏡はない。しかし心にあるそれに己を映し出してだ。王はそこに映っている自分自身を見て。そして憂いと共に言うのである。
「ただ。満足する美だけをです」
「求めておられると」
「そう仰いますか」
「そうです」
また言うのだった。
「それが私なのです」
「そこがビスマルク卿と違う」
「そうだとも」
「私は私だけなのです」
鏡を見つつ。王は述べていく。
「そうでしかないのです」
「ですが陛下、それでもです」
「陛下はバイエルンの為に働かれています」
「そのことは誰もが認めています」
「そうであればいいのですが」
こう言う。だが、だった。
王はだ。さらにだった。
己の見ているものをだ。さらに見て述べたのだった。
「だからこそホーエンローエも最後の最後まで」
「残念ですがそれは不可能です」
「議会も臣民も反発していますので」
「ですからとても」
これはどうしようもなかった。それでだった。
王は結局ホーエンローエを罷免した。これによりバイエルンのプロイセンへの反発はさらに強くなり抑えられなくなった
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