暁 〜小説投稿サイト〜
問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― 主催者は終わりを夢想する
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かなぁ」
「そりゃ、あっちの世界でされたのがそこまで意志がこもってなかったんだろ。そういう意味では、音央にぶつけられたヤツは破壊力が高かった」
「チッ、敵ながらあっぱれですね、音央さん……」

そもそも元いた世界で一輝の本質を知っていた人間は、どれくらいいたのだろうか?それすら理解していない人間からの言葉が相手の心に届くはずもなく、当然の結果として彼は学ばずに今に至った。
しかし、六実音央はそうではない。もっと言えば、理解しないでいられる立場には存在していなかった。鬼道一輝の従者という立場は、自然とそれら全てを把握しなければならない立場になる。彼女はその上で、その感情を抱き、その思いを伝えた。その場の勢い、雰囲気に流された部分もあるのだろうが、はっきり伝えたのは確かであり。一輝が新たな感情を理解し始めるきっかけになったのもまた、事実なのだ。

まあ、まだ感情を構成出来ていないため鬼道一輝というソフトウェアには何もインストールされておらず。それゆえの発現なわけだが。

「で、どうする?するのか、しないのか」

と、若干それた話の軌道を戻す。サービスのつもりなのか無意識か、顎を掴んで自分の方を向けさせる徹底ぶりである。さて、そんな状態に置かれてしまった湖札はどうするのか。自分からそれを奪いに行くか、あるいはただ目を閉じ無言でそれを要求するか……

「……心が持たないので、またの機会に、で」

などと言った前向きな選択肢がとれるはずもなく。頬を朱に染め、目線を逸らし、兄の口を手で押し返す。結局のところ、自分から行くことは出来ても相手から来る時に対応できない性格なのだ。
故に、兄の手から逃れて体ごと逸らしつつ、誤魔化すように猪口を兄の方へつきだす。トクトクトク、という音と共に手元にかかる重みが増える。止まったところで自分の方に持ってきて一気にあおり、再びつきだす。それを数回繰り返せば、極短時間で一気にアルコールを摂取した形になるわけだ。いくら強いといえども、そんなことをすれば多少は酔いも回る。それに任せて再び一輝の方を向くと……

「……何、それ?」

そこには、目の前に文字を浮かべる一輝の姿があった。
何だそれは、と注視してそれが少し間違っていたと理解した。一輝の手は何かをつかんでいる様子であり、文章の上の方には「ギフトゲーム名」という文字が見える。それ以外の文字は「文字がある」ということしか認識できないが、それはつまり。

「……契約書類(ギアスロール)?」
「ま、そういうこった。内容、読めるか?」
「ぜんっぜん読めない。何それ?」

兄の手にあるそれを奪い取ろうと手を伸ばし、握る。しかしその手は何かの感触をとらえることもなく、空を切る。

「……何それ?」
「あー、お前でもそれってことはかなり徹底し
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