500部分:第二十九話 人も羨む剣その二十二
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第二十九話 人も羨む剣その二十二
ワインについてもだ。彼は話した。
「ワインは赤で」
「そちらもフランス産ですね」
「今宵のワインは」
「はい、そうです」
まさにそうだというのだ。フランスのものだとだ。
「ボルドー産で」
「ではその様に」
「こちらで手配します」
「御願いします」
ホルニヒは話を終えた。そこまで聞いてだ。
侍従達はふとだ。心配する顔になった。そうしてだ。
ホルニヒに対してだ。こう尋ねたのだった。
「しかし近頃の陛下は」
「どうも夜にばかり動かれています」
「それはどうなのでしょうか」
「昼に休まれていますが」
「陛下は夜を好まれだしているのです」
ホルニヒは彼等の問いに答えた。これがその答えだった。
「月の光を」
「だからですか。それもミュンヘンを離れてですか」
「アルプスにおられるのですね」
「そして黒い森に」
「鉄道で移動され」
王は鉄道を愛していた。その新しい技術をだ。
それでだ。移動の際にはだ。よく鉄道を使っているのだ。特別に造らせた豪奢な鉄道を使ってだ。彼はミュンヘンから森に行っているのだ。
その王についてだ。彼等は言うのである。
「常に夜に動かれていますが」
「王は昼におられるものですが」
「夜に動かれるのは」
どうかというのだ。しかしだ。
ホルニヒはだ。その彼等にこう言った。
「そこは何とかです」
「何とかですか」
「はい、陛下の望まれるようにです」
そうしてくれというのだ。
「どうかです。御願いします」
「陛下が夜におられるのならですか」
「それを望まれるならですか」
「だからですか」
「そうです。陛下は今はそうされたいのです」
夜にいたい。そうだというのだ。
「ですから」
「陛下は繊細な方ですが」
侍従の一人が言った。このことはだ。
彼等もよく知っていた。王は感情を爆発させて怒鳴ったりすることはない。だがあまりにも繊細でだ。何かあるとそれでなのだ。
傷つく。それを知っているからだ。彼等も。
ホルニヒの言葉に頷いた。それで言うのだった。
「わかりました」
「そうして頂けますか」
「我等は陛下の臣です」
彼等は畏まってこう答えた。
「陛下には絶対の忠誠を誓っています」
「そして忠誠以上にです」
「我々は」
どうかというのだ。彼等は。
「陛下を愛しています」
「人として」
「陛下という方をです」
彼等も王のその魅力を受けていた。それでだ。
ホルニヒに述べてだ。それからだった。
畏まった顔でまたホルニヒに話す。
「では。陛下が傷つかれるのならそれを癒す為に」
「その為にも」
「そうさせてもらいます」
「有り難うございます」
侍従達に言われてだ。ホ
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