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戦国異伝供書
第二十一話 天下布武を固めその三

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「よいな」
「生きよというのですな」
「殿をお護りしたうえで」
「そうすればよいのですな」
「その時は」
「死ねと言うことはせぬ」
 それが信長だ、彼は誰にも戦でそうは言わない。
「わしに何があってもな」
「そしてですな」
「我等が戦うことになっても」
「それでもですな」
「我等は」
「死んではならん、生きてじゃ」
 そうしてというのだ。
「勝ち鬨を見てじゃ」
「我等もですな」
「勝ち鬨を挙げるのですな」
「そうせよ」
 まさにというのだ。
「よいな」
「わかり申した、それでは」
「その様に」
 二人も信長に応えた、そして信長の命じるままたらふく食った。その間も信長の傍から離れはしない。
 玄米の握り飯を次から次に食いつつだ、毛利は信長に言った。
「殿、徳川殿の本陣ですが」
「そちらのことですが」
「竹千代の傍にじゃな」
「大久保殿がおられ」
「そして護っておられるそうです」
「大久保彦左衛門じゃな」
 大久保と聞いてだ、信長はすぐに述べた。
「あ奴がおればな」
「徳川殿もですな」
「安心ですな」
「わしにお主達がいてじゃ」
 そしてというのだ。
「竹千代にはあ奴がおる」
「だからですな」
「あの方も大丈夫ですか」
「うむ、安心してじゃ」
 そしてというのだ。
「采配と執れるわ」
「真田家の十勇士達がいようとも」
「それでもですな」
「あの者達が来ようとも」
「それでも」
「お主達と彦左衛門の武芸は天下の武芸、まさに弁慶の如きじゃ」
 だからだというのだ。
「その弁慶がおるならな」
「例え相手が真田十勇士でも」
「それでも」
「何とでも出来る、安心してな」
「では」
「この戦もですな」
「宜しく頼むぞ、ではわしもじゃ」
 今度は自分のことを言う信長だった。
「背中をお主達に預けてな」
「そして」
「そのうえで」
「この次も采配を執る、そして戦が終わった時は」
 信長はこうも言った。
「武田信玄、甲斐の虎はな」
「殿の前にいる」
「そうなりますな」
「そうじゃ、毛利は家臣にした」
 毛利元就、彼を降した結果である。
「そして次は武田信玄となる」
「甲斐の虎もですな」
「遂に殿の家臣となるのですか」
「そして天下の為に働いてもらう、敵に回せば恐ろしいが」
「しかしですな」
「家臣となれば」
「天下を治めるのにお主達以外に多くの欲しい者がおったが」
 そのうちの一人がというのだ。
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