498部分:第二十九話 人も羨む剣その二十
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第二十九話 人も羨む剣その二十
「おわかりになられていない筈がない」
「では話が早いですね」
「だがそれは」
「陛下にとっては受け入れられないものであるというのですね」
「何度も言うが繊細な方なのだ」
沈んだ目でだ。公爵は話した。
「御心を害することは避けたいのだが」
「できればですね」
「それはできないのだな」
「私も何度も言わせて頂きます」
今度はホルンシュタインがこう言うのだった。
「それが時代の流れだからです」
「時代の流れとは無慈悲なものだ」
公爵はここでだ。深い溜息を出した。
そしてだ。こうも言ったのである。
「人に。受け入れられないことを強いる」
「そういうものですね、時として」
「陛下のその御心を害してどうなっていくのか」
「何にもならないでしょう。陛下は芸術で御心を晴らされます」
「それで済めばいいが」
「済めばいいと」
「嫌な予感がする」
そうだというのだ。公爵は。
「どうしてもだ」
「嫌な予感ですか」
「どうしてもだ。あの方はあまりにも繊細だからこそ」
その繊細ことがだ。恐ろしいというのだ。
「壊れてしまいそうでだ」
「では退位もまた」
「退位!?」
「はい、私とて陛下への忠誠はあります」
これは本心からの言葉だ。ホルンシュタインとて王への忠誠心はある。彼は彼なりにバイエルン、そして王のことを考えているのだ。
それでだ。今それを言うのである。
「陛下のことを考えればです」
「できるのか、それは」
公爵はそのことはだ。眉を顰めさせてだ。
言う。そのことを。
「陛下は結婚もされていない」
「そして今後もですね」
「その望みはない」
従ってだ。後継者、王の直系はいないのだ。
それでだ。言うことは。
「そしてオットーもだ」
「あの方は」
「陛下以上に。そっとしてやってくれ」
彼をだ。心から心配して気遣う言葉だった。
「あの子はもう」
「もうですか」
「そうだ。心が壊れた」
彼はだ。既にだというのだ。
「調子のいい時もあるがだ」
「ですがそれでもですね」
「そっとしておいてくれ」
また言う公爵だった。
「あの子だけは」
「しかし王位継承権はですが」
「オットーが第一だな」
「陛下が王であられる限り御心を乱されるなら」
やはりだ。王のことはホルンシュタインも考えている。
しかしだ。それは彼の考えであり王の考えではない。彼は王を見ることはできる。しかし王の心の中まで見ることはできなかった。
それでだ。今言うことは。
「退位されてです」
「そのうえでか」
「芸術を楽しまれてはどうでしょうか」
「できればいいのだがな」
それ自体が無理があるとだ。公爵は話した。
「オットーがあれ
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