497部分:第二十九話 人も羨む剣その十九
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第二十九話 人も羨む剣その十九
それでだとだ。公爵はさらに言う。
「それで何故あの国が軸になるのを笑顔で受け入れられる」
「陛下は尚更ですね」
「そうだ。しかもユンカーはユンカーだ」
つまりだ。彼等とは違うというのだ。
「全く異質の存在ではないか」
「北と南で」
「しかも東と西だ」
ドイツは既に大きく二つに分かれていた。既にだ。
「それでどうしてなのだ。プロイセンが軸であることを喜べる」
「確かに。それは私もです」
「卿もだというのに何故受け入れられる」
「それが政治だからです」
平然とした顔でだ。ホルンシュタインは応える。
「割り切って考えるのです」
「割り切ってか」
「そうです。個人的な感情は置いておいて」
「それができるか」
「陛下がですね」
「そうだ。陛下がだ」
王がそれをできるのか。それは。
公爵は王を幼い頃より知っている。それでだ。
ここでだ。そのことを強く言うのだった。
「あの方はあまりにも繊細だ」
「硝子の様に」
「あの方の御心は澄んでいてしかも脆い」
「まさに硝子ですね」
「その方がそれを受け入れられるのか」
こうだ。公爵は言うのだ。
王の繊細さ、それがだった。バイエルンを完全にドイツの中に入れることを拒み阻んでいる。ホルンシュタインはそれが問題だと言う。
それでだ。彼も言うのだった。
「それが難しいですね」
「しかしそれでもか」
「はい、そうです」
「それが政治だからか」
「何度も言いますが時は流れているのです」
このことがだ。それを王に強いているというのだ。
「ドイツは一つになりです」
「あのフランスにも介入をさせない」
「三十年戦争の様なことはあってはならないのです」
ホルンシュタインもだ。ここでだ。その目の光を強くさせた。
そしてだ。その目に怒りも帯びさせて話すのだった。
「忌まわしい。あの様なことは」
「あの戦いではフランスが常に後ろにいた」
「プロテスタントにつき戦いを煽りです」
神聖ローマ帝国の諸侯達だけでなくだ。
デンマークやスウェーデンといったプロテスタントの国にも資金を援助し戦わせていたのだ。フランスは言うまでもなくカトリックの国だ。
しかし宿敵である神聖ローマ帝国を倒す為にだ。そうしていたのだ。
そしてだ。戦いの終盤になのだ。
「参戦もしてきました」
「それによりドイツは荒廃した」
「どれだけの人間が死んだのか」
ホルンシュタインは静かに怒ったまま話していく。
「神聖ローマは千六百万の人口がありました」
「それが一千万に減ったな」
「八百万とも六百万とも言われていますね」
「四百万ともな」
極端な主張ではだ。そこまで減ったとされているのだ。しかしそれでもだ。
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