第八十二話 最後の一人その三
[8]前話 [2]次話
「そうじゃな」
「そうする、そして今はだ」
「こうして飲んでじゃな」
「楽しむ」
「そういうことじゃな、しかし美味しいチーズぜよ」
当季は肴のチーズを食べつつこうも言った。
「絶品ゼよ」
「これなら幾らでも食えるな」
「そして飲めるぜよ」
「チーズの筈だが何処か日本の味がする」
「不思議なものぜよ」
「蘇に近いのでは」
これは良太の見立てだ。
「造り方等が」
「あれにか」
「はい、チーズはチーズでも」
「それで酒にも合うか」
「そうなのでは」
「日本の味でか」
「はい、そう思いましたが」
こう言うのだった。
「どうでしょうか」
「そうかもな、俺はチーズの造り方は知らないが」
「この島は日本の趣です」
「それならだな」
「日本の味にもなるか」
「味覚を合わせる努力をするので」
その結果として、というのだ。
「それでなのでは」
「そうなるか、ではこのチーズを食ってな」
「お酒も飲んで」
「今夜はそのうえで寝るか」
「そうしましょう」
良太も英雄に話しつつ飲んで食っている、そうして彼等は酒をしこたま飲んでそのうえでこの日もよく寝た。
そして次の日だった。
水戸城の方に向かった、すると。
周りは武家屋敷が並んでいた、英雄はその武家屋敷の中を仲間達と共に歩き白い壁と瓦、門が目立つ街並みを見て仲間達に言った。
「こうした場所もだ」
「いいものですね」
「全くだ」
謙二にもこう言った。
「武家屋敷は疎いがな」
「あまりご存知ないですか」
「旅行では金沢等で見たが」
それでもというのだ。
「神戸にはないしな」
「大阪にも京都にもですね」
「ないからな」
だからだというのだ。
「馴染みはない」
「関西では武家屋敷は」
「あまりないな」
「どうにも」
実際にとだ、謙二も答えた。
「確かに金沢ではありますが」
「北陸ではな」
「武士が多かった街ではあります」
武士が多いだけに必然的にだ。
「やはり、ですが」
「関西はな」
「神戸は明治以降に発展していますし」
港町としてだ、そつまりその分江戸時代とは縁が薄いのだ。武士が存在していて支配階級だった時代と。
「大阪は町人の街、京都は公卿」
「奈良もだな」
「はい、寺社の街でして」
「ある筈がないな、武家屋敷は」
「こうした街には」
「そうだな、関西にはどうしても少ないな」
そうなってしまうのは当然だというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ