491部分:第二十九話 人も羨む剣その十三
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第二十九話 人も羨む剣その十三
「私にとってもモンサルヴァートなのだ」
「聖杯の城ですね」
「その」
「モンサルヴァート。何という美しい響きか」
その名前自体にだ。王は美を見ていた。
そしてだ。こう言うのだった。
「私はその城の中で生きるのだ」
「では陛下は」
また一人が王に話す。
「パルジファルになりますね」
「遥かな森の中にある聖杯城の主だからだな」
「はい、まさしく」
「そうなりたい」
心からだ。王は願い話した。
「私はこの世ではなくあの世界にいたいのだ」
「そうでありたいからこそパルジファルですか」
「あの王ですか」
「彼はクンドリーの接吻で清らかな愚か者から槍の主になる」
イエスの処刑の時にその胸を刺したロンギヌスの槍だ。キリスト教における聖遺物の一つだ。まさに聖杯と並ぶキリスト教の至高の宝なのだ。
その槍を持つ者こそだ。聖杯城の主なのだ。つまりだ。
「パルジファルこそは聖杯の持ち主でありだ」
「聖杯城の王である」
「槍の主であるからこそ」
「私はワーグナーを知った」
王は語っていく。
「そして聖杯城に入るのだ」
だが、だ。ここまで言ったところでだ。
王の顔はまた曇った。憂いにより。
その憂いをだ。言葉に出してだった。
「もっとも私は槍も聖杯も手にしてはいないが」
「あれはこの世のものではないので」
「どちらも」
「あの二つを手にしてこその聖杯城の王なのだ」
その世界のだ。王だというのだ。
「だが私はその二つを手にはできないだろう」
「この世にはないからですか」
「どちらも」
「そうだ。ない」
槍はハプスブルク家が持っていると言われている。しかしその槍が本物のその槍かどうかはだ。残念ながら誰にもはっきりと言えないことだ。
だからだ。王も言うのだった。
「あの槍はこの世では誰も手にできないのだろう」
「どうしてもですか」
「それは」
「そうだ。私のモンサルヴァートはモンサルヴァートではない」
その二つなくしてはというのだ。
「そして私も」
「陛下もまた」
「そうだと」
「パルジファルには。完全になれない」
そうだというのだ。そしてそれは。
「この世では」
「なりませんか」
「どうしても」
「この世は。憂いに満ちている」
王から見てだ。そうなることだった。
「手に入れたいものは届かない世界なのだ」
「それがこの世界ですか」
「我々がいる」
「そう思う。そしてその世界に私がいる」
それはどうかというのだ。
「辛いものだ」
「ですが陛下、城を築かれますし」
「それにです」
ここでだ。周りはだった。
王を慰める為にもだ。この話を出したのだった。
「間も無くワルキューレもです」
「あ
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