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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
99話:第三次ティアマト会戦(虎口)
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艦隊旗艦アースグリム
アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト 

「既に半包囲は完成したとはいえ、こういう殲滅戦は忍耐が必要だ。俺は落ち着いて司令席に座っているのは苦手だから、どうも落ち着かぬ」

「ビッテンフェルト少将、こういう展開は今後も余りあるまい。むしろ正規艦隊司令になれば、自分の判断ミスからこういう立場になる事もあり得るとしっかり焼き付けておくことだ。さすがにこれから猪突して包囲網を壊すようなことをしたら、俺もかばいきれんぞ」

「それ位は理解している。リューデリッツ伯からもメルカッツ提督からも『すべき時』を誤らなければ、攻勢に関しては宇宙屈指とお褒め頂けたのだ。その攻勢に出るタイミングが無いからこそ、同じように感じているであろうファーレンハイト卿に愚痴っているのではないか」

ビッテンフェルトがいうとおり、俺たちは攻勢に長けてはいるが、こういう網を狭めていくような展開では、持ち味を出すことは難しい。そして、同じ分艦隊司令同士でありながら、よくコンビを組む仲だし、お目付け役を期待されている事も理解していた。

「それにしてもミッターマイヤーの進撃は神速と言って良いな。俺も後先考えなくて良いなら何とかなるかもしれんが、牽制をいなしつつ、続いてくる味方とバランスを取りながらあれが出来るとは思えぬ」

「用兵の速さで言えば宇宙屈指やもしれんな。もっとも後ろに続いているのはディートハルト殿の分艦隊だ。付いていくほうもさすがといった所だ。それを言うなら、唯一の退路のあちら側、ロイエンタール分艦隊のサポートに徹しているが、ルッツ艦隊の動きも配慮が行き届いている。あれだけ連携できれば、さぞかし気持ちが良いだろうな」

「攻勢に出られる場面があればなあ。リューデリッツ伯とメルカッツ提督に『ビッテンフェルトここにあり!』と示しできるのだが......」

ビッテンフェルトは所在なさげにしているが、用兵の幅を広げる意味でも良い経験にすべきなのだが......。『つまらない』と全身で表現しているかのような姿をモニター越しに見て、思わず笑ってしまう。彼の分艦隊に所属する兵士たちは『ライオン』に例えるらしい。確かに気分屋なところがあり、誰にでも懐くわけでもない当たり『猫科』なのかもしれない。

だが、裏表がなく、猪突猛進な所を考えれば、『猪』が妥当だと思う。とはいえ『オレンジのうるさい猪』など、どんな絵本にも登場しない。さすがに一般的に使うには無理があるかもしれん。これは俺だけの胸に収めておくとしよう。この戦いに勝ち切ればいよいよ正規艦隊司令が見えてくる。『攻勢』だけでない所を見せる意味もあるのだから、『オレンジの猪』にもしっかり言い聞かせておかねばなるまい。まったく、世話のかかる奴だ。
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