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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生
99話:第三次ティアマト会戦(虎口)
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能性がありましたが、こちらにかなりの損害が出なければ、そのまま追撃戦に移行するだけです。少しでも多くの戦力が生き残れる策を選んだのでしょうが、失敗すれば全軍が危機に瀕する策でもありましたな」

狙いは良かったのだ。ただ、突撃の先陣が動き出した際、残りの艦隊も一部が相対する艦隊へ突撃を実施した。これが想定外だったのだと思う。本来なら我々のメンテナンスのタイミングを待って突撃を開始したかったはずだ。ただ、敵将にとって不幸なことに、今回からメンテナンスをより細かい単位で行い、前線の火力が減る時間をかなり減らしている。息切れがあるから一方的な猛撃にも耐えられる。耐えても耐えても息切れが無いとなれば、一か八かの突撃に出るのも理解できるが、司令役としては大きな誤算だっただろう。直ぐに切り替えて牽制を強めたが、半包囲に向けた展開を開始するには十分な時間があった。

「それにしても袋の出口を固める『ローエングラム伯』と『ロイエンタール男爵』の動きはさすがですな。唯一の退路ですから敵も必死にそこを目指しておりますが、うまく勢いを殺しながら足止めしております。特に『伯』は分艦隊司令としては初陣でしたから心配していたのですが、これは大きなお世話でした」

「あの者は幼い事から厳しい環境に置かれていたし、『男爵』は『伯』の戦術講師だったからな。うまく連携しておるようで何よりだ」

「実力があることは承知しているのですが、お若い事もあるので何かと気にしてしまうところがございますな。小官もリューデリッツ伯には何かと良くして頂きました。いずれ軍の重鎮になるべく養育されたと聞いております。これは周囲の方々皆様がそうかもしれませんが......」

「『伯』が磨いた原石を、皆で仕上げればよいではないか。私が20歳の時は、任官したての少尉でな、それまで接点が少なかった平民の兵士たちに色々教えてもらったものだ。なにかと帝国の現実を見せつけられて、感じるところの多い日々であったな」

「小官の場合は、空戦隊に任官して、諸先輩から生き残る術を叩きこまれだした頃ですな。当時は理解できませんでしたが、『甘く』すれば本人だけでなく、僚機を落とされた者も危険になります。頭では分かっていましたが、あの『厳しさ』が『生き残らせる為の優しさ』だったのだと理解できたのは、実戦を何度か経験してからでした」

すでに半包囲体制に入っており、あとは袋の中身を削っていくだけだ。ローエングラム伯はともかく、ファーレンハイトとビッテンフェルトは攻勢を好み過ぎる所がある。包囲を狭めながらしっかり殲滅するもは良い経験になるだろう。ケンプ少将もそうだが、あの2名も正規艦隊司令の候補者だ。一度は参謀長役をやらせた方が良いやもしれぬな。


宇宙歴796年 帝国歴487年 4月上旬
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