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提督はBarにいる・外伝
ミーティング・フォー・ブルネイ・2
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感覚としちゃあ近いものがあるかもな。大きな違いは人工衛星を利用すれば大規模な力場の観測は辛うじて可能、ってトコだな?」

「ですね。ネガスペクトラムは電磁波等のエネルギー流を狂わせて『澱み』を作り出します。その澱みを見つければ理論上は観測が可能、という訳です」

「理論上は、って事は現実的には難しいっぽい?」

「そうですね、そんな事が出来るのならば羅針盤のような曖昧な物に頼らなくてもいいわけですし」

「問題点は幾つかあります。まずかつてのネガスペクトラム観測システムでは、ネームレベルクラスの力場の発生でなくては観測が困難だった事、そしてその精度は大体の海域を絞り込む程度にしか役に立たなかった事です」

 それでは現場レベルでは使えない、と会議室内の一同は納得した。20年以上前ならいざ知らず、ネームレベルの発生件数は減少の一途を辿っている上に一番被害をもたらしているのはネームレベルでも、ましてや鬼でも姫でもない『普通の』深海棲艦なのだから。

「通常の深海棲艦は観測出来ないんですか?」

「出来るとは思いますよ?奴等が万単位の群れで固まって行動してれば、ですけど」

 赤城の疑問にあっけらかんと答える青葉。通常の深海棲艦でも微弱なネガスペクトラムを放出(?)しているので、塵も積もれば……の理論で数万の群れであれば観測出来るだろう、というのは前から言われていた事だった。しかしそんな巨大な群れが襲ってくれば勝ち目など無いのだから、逃げの一手しか無いのだが。

「その微弱なネガスペクトラムを観測して敵を探知しようとして開発されたのが私達のよく知る羅針盤なのですが……その完成度はお察しの通り、です」

 未完成品もいいところではあるのだが、敵艦隊の位置を絞り込む精度はそれまでのネガスペクトラム観測よりもかなり正確であった為に、そのまま現場への実戦投入が開始されて特に改良される事もなく、今日に到っている。

「あ〜、だから羅針盤ってブレるし、たまに敵が居なかったり、代わりに渦潮に巻き込まれかけたりするんだ。長年の疑問が解けた気がするよ〜」

 と、のほほんと語る北上。

「とにかく、先程の空撮映像が撮られた際に、過去のネームレベルよりは弱いですがネガスペクトラムを日本の人工衛星が捉えてます。やれやれ、物持ちがいいのが幸いしたというか何というか……それを論拠に壬生森提督は『リバースド・ナイン』をネームレベルだと断定するに至ったようです」

「とは言っても相手は過去に何回か沈められてんだ。俺達が沈められない……なんて馬鹿な話は無ぇやな?」

 提督はニヤリと笑い、煙草に火を点けた。ネームレベルだのネガスペクトラムがどうのだのは重要な事ではなく、『どうやったら敵を仕留められるか』が重要なのだから。




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