478部分:第二十八話 逃れられない苦しみその二十二
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第二十八話 逃れられない苦しみその二十二
その彼の世界を瞼に浮かべながら。今話すのだった。
「夜の世界の美しさを」
「だからこそ夜に」
「夜の光は優しい」
王は今度はその光をだ。瞼に浮かべていた。
「月の光、そして星の光」
「そうした光こそが」
「私はその中にいたくなっている」
心が傷ついていった王はだ。そこに至っていた。
至りながらだ。そうしてだった。
その夜を見ながらだ。ホルニヒに話していく。
「だから私は」
「これからは」
「昼に身体を置かず夜にいたい」
まさにそうだというのだ。
「そうしたい」
「では私は」
「そなたは」
「陛下と共に」
穏やかに微笑みだ。こう王に述べたのだった。
「そうさせてもらいます」
「それでいいのか」
王はその彼にだ。気遣う声でだ。
声をかけだ。問うたのだった。
「人は本来は昼にいるものだ。それで」
「ですが陛下は夜を愛されているのですね」
「そうなろうとしている」
「私は陛下の臣です」
それならばというのだ。ホルニヒは己が何かをわかっていた。
そしてその立場から。王への想いはそれ以上に強くだ。王にその心を見せて話した。
「ですから」
「そうしてくれるか」
「御一人のままなら私は」
「私は勝手な男だ」
自嘲をだ。微かに込めての言葉も出した。
「一人でいたいというのにだ」
「それでもですか」
「私はそなたに側にいてもらいたい」
ホルニヒに話すのだった。
「是非な」
「左様ですか。では」
「間も無くドイツは一つになる」
王にはわかることだった。このことが。
「喜びと。苦しみが私に訪れるのか」
「陛下に」
「私だけのことだろうが」
それでもその二つが訪れることを思いながらだ。王は黄昏を迎える宮殿の中にいた。葡萄の美酒に今その弱まっていく日差しが差し込んでいた。
第二十八話 完
2011・8・28
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