477部分:第二十八話 逃れられない苦しみその二十一
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第二十八話 逃れられない苦しみその二十一
その世界からだ。王は話していくのだったl。
「ですから。陛下が男性を愛されていても」
「それでもだな」
「私は結婚されると思っていました」
「愛がなくともか」
「はい、思っていました」
そうだと話すホルニヒだった。
「しかしそれは」
「君主ならば愛のない結婚も当然だな」
「貴族の方々の間ではそうだと聞いていますが」
「かつてのフランスがそうだった」
ここで話が出たフランスは肯定的なものではなかった。王が普段話すフランスとは違ってだ。否定的に話されるフランスだった。
そのフランスについてだ。王は否定的に話を続けていく。
「貴族同士の結婚はあくまで義務だった」
「家と家を結ばせる」
「そうしたものだったな」
「はい、そうでしたね」
「そして不倫は当然のことだった」
不倫と言うとだ。王は。
その顔をこのうえなく曇らせた。そしてだ。
不快感も露わにさせてだ。話すのだった。
「それはどうしても許せない」
「どうしてもですね」
「愛のない結婚程おぞましいものはない」
生来持っているその潔癖症をだ。王は見せた。
それを身に纏いだ。今王はホルニヒに話すのだった。
「ああしたものは消していかなければならない」
「どうしてもですね」
「だから私はだ」
「結婚されなかったのですか」
「そうだ」
こう言うのだった。
「絶対にだ」
「だから結婚されなかったのですか」
「妹の様な存在と結婚はできない」
妹への愛、男女の愛の違いだった。
「私はだから」
「ではこれからも」
「結婚はしない」
一生だ。そうだというのだ。
「何があってもな」
「わかりました。では」
「私は一人でいたい」
この言葉がだ。ふと漏れた。
「ずっと。一人でいたい」
「御一人で」
「何もかもが嫌になろうとしている」
俯く様になってだ。そうしての言葉だった。
「特に昼にいることは」
「昼は」
「企み深い昼」
トリスタンとイゾルデでのだ。この言葉がだ。
王の口から出た。昼を否定してだ。
「夜の方がどれだけいいのか」
「夜といえば」
「ワーグナーは私に教えてくれた」
やはりワーグナーだった。王の心にあるのは。
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