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永遠の謎
476部分:第二十八話 逃れられない苦しみその二十

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第二十八話 逃れられない苦しみその二十

「そのことについて誰もが話しているな」
「あまり御考えにならない方が」
「しかしそれでもだ」
「考えてしまわれますか」
「幾ら目を塞いでも目を閉じても」
 それでもだというのだ。このことについての話がだ。
「入って来る。わかっていたのだが」
「ゾフィー様のこともまた」
「ゾフィーには悪いことをした」
 それもわかっていた。王は決して愚かではない。
 だからこそ言えてだ。そうしてだった。
 暗い顔でだ。また話したのだった。
「だが。私はどうしても」
「ゾフィー様を」
「愛せない。女性を愛せない」
 これが理由だった。結婚に至らなかった。
「どうしてもな」
「ではこれからも」
「私はこれからも結婚しない」
 そうするというのだ。王は。
「死ぬまでだ」
「では生涯に渡って」
「そうする。こう言うとエリザベス女王になるか」
 イングランドのだ。その女王にだというのだ。
「あの生涯に渡って結婚しなかった」
「あの女王陛下とですか」
「同じになるか。事情は全く違うが
「では伴侶がいない王もですね」
「いるのだ。だが異様な話であるのは間違いない」
 君主は伴侶がいる、子孫を残す為に。君主として子孫を残すことは絶対の義務だ。君主は血脈によってなるものだからだ。
 だが王にとってはだ。その義務は。
「苦痛だ」
「苦痛?」
「考えるだけで苦痛だ」
 そうだというのだ。
「私は男性だが」
「女性と結ばれることを考えられると」
「それだけで苦しくなる」
 そうなると。王は怯える様な顔で話していく。
「おぞましいものさえ感じるのだ」
「前から仰っている様に」
「私だけだろう」
 王はこうも言った。
「こう考えるのは。だが」
「それでもですか」
「できなかったのだ」
 言葉は過去形だった。
「どうしても」
「そうだったのですか。前から仰っていた様に」
「どう思うか」
 ここまで話してだ。このことについてホルニヒに尋ねた。
「そなたはこのことを」
「私は」
「そのまま言っていい」
 いいというのだった。ありのまま言っても。
「むしろ率直な言葉を聞きたいのだ」
「わかりました。では」
「どう思うか。そなたは」
「私はこのことは」
 前置きしてからだ。王に話す彼だった。
「やはり妙に思いました」
「そうか。やはりか」
「陛下はゾフィー様と結ばれると思っていました」
「例え何があってもか」
「そうです。王ですから」
「そうだな。王ならばな」
「御后がいるものですから」
 常識からだ。ホルニヒは話していた。そうした意味で彼はこの世にいた。王がいるその世界にはだ。彼は身を置いてはいなかったのだ。

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