475部分:第二十八話 逃れられない苦しみその十九
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第二十八話 逃れられない苦しみその十九
「それでどうしてこのことにだ」
「何もできないのですか」
「できることは限られている」
そのだ。限られていることこそはだった。
「プロイセン王をドイツ皇帝に推挙することだけだ」
「他にはありませんか」
「ない」
まさにだ。それだけだというのだ。
「それだけなのだ」
「陛下がされたくないことだけですか」
「これは甘えになるだろうか」
前置きしてからだ。
王は憂いに満ちたいつもの顔でだ。ホルニヒに話した。
「王といえどもだ」
「されたくないことはありますか」
「そうだ、ある」
そうだというのである。
「人は誰でもそうだな」
「確かに。それは」
「そなたもだろう」
ホルニヒ自身にもだ。王は問うた。
「それは」
「はい、私もそれは」
「人にはどうしてもそうした感情がある」
「しかし王はなのですね」
「そう言ってはいられないのだ」
それは何故か。国を預かっているからだ。
だからそれはできない。それはわかっているのだ。
だがそれでもだ。王は話すのだった。
「しかし。どうしても」
「できませんか」
「バイエルンが。プロイセンに膝を折る」
そう考えるとなのだ。
「そういうことになるからだ」
「しかし最早ドイツは」
「そうだ。一つになる」
これは絶対だった。最早時代の流れはそうなっていた。
そして王もだ。ドイツの統一自体は歓迎していた。
実を言えばだ。ドイツ皇帝については。こう言うのだった。
「私は皇帝にはなりたいとは特に思わない」
「皇帝にはですか」
「確かにバイエルン王のままでドイツ皇帝になれる」
「そしてヴィッテルスバッハ家はですね」
「かつて神聖ローマ皇帝にもなっている」
ハプスブルク家と争いだ。そうなったのだ。
長い歴史の中でだ。そうしたこともあったのだ。
だが、だ。それと共にだ。
王はだ。ここではこう話した。ホルニヒに対して。
「私はこの世における欲はないつもりだ」
「それはですか」
「そうだ。ない」
そうだというのだ。この世における欲はないというのだ。
それでだ。皇帝についても。
「祖先では皇帝が出ていても」
「陛下御自身は」
「バイエルン王のままでいい」
そのだ。王のままでいいというのだ。
「皇帝にはなろうとは思わない」
「そうなのですね」
「やはりドイツ皇帝にはプロイセン王が相応しい」
このこともだ。わかっていたのだった。
「しかしだ。それを私が推挙するのは」
「臣下となることだからですね」
「私もまた。バイエルンも」
プロイセンの下になっていく。そうなってしまうからだ。
王はだ。どうしてもだった。
「絶対にだ」
「できませんか」
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