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黒い機関員
第二章
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「泳ぎも上手だ、いい船乗りだ」
「だから問題ないか」
「ああ、俺はそう思うぜ」
「そうだといいがな」
「下らないことを言う奴は気にしなくてな」
「俺達は仕事をすることか」
 シャインはアッシュのその言葉に頷いた、アッシュの整っている端整な顔も炭に汚れて黒くなっている。これは身体も服もだ。勿論これはシャインも同じだ。
「そうだな」
「結局仕事をするしかないだろ」
 また言うアッシュだった。
「俺達は機関員だからな」
「そういうことか」
「ああ、そろそろこのリバプールを出てな」
「ニューヨークまでだな」
「船旅がはじまるしな」
「俺達の仕事の時がな」
 これまではただの準備だった、炭等を運び込む。
「だからな」
「そっちをしていこうぜ」
「それじゃあな、上の方は優雅な旅でな」
「俺達は仕事だ」
「そうなるな、この船は飯が美味い」
 シャインはこのことについても言及した。
「質のいい食材を使っているからな」
「酒だってな」
「客に凄いものを出すだけにな」
 まさにというのだ。
「それだけにな」
「俺達の食うものもな」
「質がいいな」
「そのことはいいな」
「色々思われていてもな」
 差別や偏見、自分に対するそれを感じていてもというのだ。シャインはアッシュにこのことも話した。
「美味い飯が食える」
「そのことはいいな」
「ああ、何だかんだでこの船に来ていいと思っている」
 シャインはアッシュに笑って言った、そうしてだった。
 出港してからも働き続けた、だが彼は船にいるうちにあることに気付いた。それでそのことをアッシュに言った。
「いい船だがまずいな」
「どうしたんだ?」
「見張りの人間が少ない」
 このことを言うのだった。
「特に夜な」
「見張りが少ないか」
「ああ、だから見落としてな」
「船とかにぶつかったりか」
「座礁したりとかな」
「なりかねないな」
 どうにもというのだった。
「これは」
「じゃあ船長に言ってみるか」
「ああ、さもないとな」
 それこそとだ、シャインは船員用の食堂でアッシュと共に夕食を食べつつ彼に話した。メニューは煮豆に焼いたベーコン、ピクルスにパンだった。メニューは普通だがやはり食材の質がよく美味かった。
「俺達がな」
「迷惑を被るからな」
「下手に船になんかぶつけられたりしたらな」
「大変だからな」
「それにこの船はボートも少ないぞ」
「沈んだ時に乗る為のな」
「これじゃあ沈んだりしたらな」
 万が一のその時はというのだ。
「本当にな」
「大勢の人が死ぬか」
「そこに俺達も入りかねないからな」
 それ故にというのだ。
「見張りを増やすべきだってな」
「船長に言うか」
「ああ、しかし俺は黒人だ」
 自嘲した
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