473部分:第二十八話 逃れられない苦しみその十七
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第二十八話 逃れられない苦しみその十七
「私はプロイセン王をドイツ皇帝に推挙しなければならないのだ」
「それは何故でしょうか」
「ビスマルク卿が認めておられるからだ」
理由はここにあった。
「あの方が。私をそこまで」
「それだけの資質が陛下にはおありなのですか」
「そのこと自体は有り難い」
人に認められる、とりわけ敬意を払っている相手にそうされることは嬉しいことだ。しかしそれでもなのだ。今それは王にとっては。
「だが。それでもだ」
「今回のことは」
「私はできることなら退きたい」
推挙からだ。どうしてもだった。
「しかししなければならないのだ」
「バイエルン王として」
「ルートヴィヒとして」
ここまで話した。そうしてだった。
その中でだ。王はまた述べた。
「この仕事をしなければならないのだ」
「ではバイエルンもまた」
「プロイセンにつく」
今回はだ。そうするというのだ。
「動員令も決めた」
「既にですか」
「今回の戦いもすぐに終わる」
王は戦局の推移についても述べてみせた。
「先の戦争と同じ様にだ」
「長期戦を予想する声が多いですが」
ホルニヒの今の話は欧州の多くの推察だ。プロイセンとフランスはその国力が近い。それで戦えば長期戦になるとの予想が妥当と言えた。これは先の普墺戦争と同じだ。
しかしだった。王はこう見ているのだった。
「プロイセンは強い。それに兵の移動が早い」
「それ故にですか」
「鉄道の力は大きい」
王が指摘するのはこのことだった。
「非常にだ」
「鉄道ですか」
「私もまた鉄道を愛している」
そうしているというのだ。実際にだ。
王は移動には鉄道をよく使っている。豪華な内装の鉄道で移動するのを好む。
王は文明の利器、とりわけ科学には夢を見ていた。それでだ。
鉄道についてもだ。肯定的に話すのである。
「あれは多くのものを迅速に移動させられる」
「迅速に、ですね」
「そうだ。迅速にだ」
それができるというのだ。
「プロイセンは既にドイツ全土に鉄道網を敷いている」
「ならばそれを使って」
「軍を即座にフランスとの国境に移動させる」
そうするというのである。
「そしてあの国のお家芸だが」
「お家芸?」
「宣戦布告と同時に攻撃を仕掛ける」
それがだ。プロイセンの伝統だというのだ。
「フリードリヒ大王からそうしているのだから」
「そういえばオーストリアとの戦争の時も」
「そうしたな」
「はい、しました」
これはホルニヒも覚えていた。先の戦争のことを。
「ではフランスに対しても」
「当然の様にする」
そうするというのである。
「間違いなくだ」
「フランスはこのことをわかっているでしょうか」
「
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