第一章
[2]次話
恐ろしい王女
アルカディアの王女アタランテは凛々しい顔立ちに毅然とした黒い瞳に波立つ長い見事な髪の毛を持ち炎の様に燃える唇を持っている。
長身ですらりとした身体を持っておりその美貌はギリシア中に知れ渡っている。
それで多くの者が彼女の夫になろうと求婚しようと考えた、だが。
生まれてすぐに男が生まれることを望んだ父王に山の中に捨てられ山の牝熊の乳で育ちそれを見た猟師に育てられた彼女は生粋の野生児に育ち自分を襲ったケンタウロス達をその弓矢で返り討ちにした程だ。
カリュドンの猪退治にも女だが参加し猪に矢を当てた程だ、それでだった。
その強さを見て自分を認めた父とも和解しアルカディアの王女として広く知られる様になった、それで結婚する年齢になってだった。
多くの者が求婚しようと思ったが生粋の野生児でかつ常に武芸に励んでいた彼女はこう言ったのだった。
「私に武芸の勝負で全て勝てた者と結婚します、しかし負け越した相手は私の弓で心臓を貫きます」
高らかに言った、この言葉を聞いてだった。
彼女に求婚しようとした者は一斉にそれを止めた、誰もが彼女のアマゾネスの者達さえ遥かに凌駕する強さを知っていたからだ。
誰もが彼女に求婚しなくなった、父王イアソスはその状況を見て娘に言った。
「娘よ、その条件ではだ」
「誰もがですか」
「結婚を求める筈がない」
こう言うのだった。
「幾ら何でもな」
「私に勝負で勝てないからですか」
「そなたに全ての武芸で勝てる者なぞ」
それこそというのだ。
「男でもいない」
「全て勝てば結婚でして」
それでとだ、アタランテは父王に毅然として答えた。
「勝ち越せばです」
「何もなしか」
「その強さを讃えて褒美を与えます」
「そうするか」
「しかし負け越せば」
「そなた自身の手で心臓を貫くか」
「弓矢で」
その誰にも負けない位の腕を持つ弓矢でというのだ。
「そうします」
「それではだ」
「誰もがですか」
「求婚する筈がない、そなたに勝てる者なぞだ」
武芸、それでだ。
「このギリシアにいるものか」
「それでそう言われますか」
「全く、無茶を言う」
父王は娘に苦い顔で言った、そして王妃である母クリュメネも娘に困った顔で言った。
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