第五章
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「本当に酷い軍隊だったよ」
「あれは北朝鮮軍が強かったんじゃ」
「いや、戦車や大砲は使ってたのは同じでもな」
金はその戦場で見たものも安本に話した。
「それがな」
「違ったんですか」
「数も攻め方も全然違った、ノモンハンと比べてな」
「弱かったですか」
「ああ、何もかもがな」
「あれだけ大勢の数、特に火力ではですね」
「なかったさ、韓国軍も北朝鮮軍もな」
どちらの軍隊もとだ、金は安本に話した。
「日本軍にもソ連軍にもな」
「遥かに及ばなかったですか」
「俺はその中にいてそれを見たさ、いいものじゃなかった」
「そうでしたか」
「ソ連軍よりずっと格が落ちる相手に勝てなかった」
「日本軍よりずっと格が落ちる軍隊にいて」
「そっちはずっとどころじゃなかったな」
当時の韓国軍の方はというのだ。
「だから軍隊は辞めたさ、それで大統領の酷さと俺も家族も言われてな」
「韓国を出られましたか」
「ああ、それだけの金もあったし韓国軍にいた時にアメリカ軍と縁も出来たしな」
それでというのだ。
「今ハワイにいるんだよ」
「そうでしたか」
「後悔はないさ」
一切という返事だった。
「今の俺にな」
「それで日系人ともですね」
「言ってるさ、結局あっちにルーツがあってもな」
「日本に生まれ育って日本軍に入って」
「それだと日本人になっていたな、そして日本軍にいたからな」
このことからと言うのだった。
「日本軍の目で韓国軍と北朝鮮軍を見て格が違うと思ってってことだな」
「そういうことですね」
「ああ、そして日本人だからあの時の韓国にも合わなかった」
「それで今ここにおられますか」
「日本に戻ろうとも思ったさ、けれどな」
「何故そうされなかったんですか?」
「一度捨てた祖国だ、戻るのも誇りがあってな」
韓国を去ってもというのだ、ルーツがある国を。
「だからだよ」
「それで、ですか」
「ああ、アメリカにな」
この国に、というのだ。
「移住したのさ」
「誇りですか」
「韓国に行ったのは親戚に声をかけられてだ、けれどその親戚も戦争で死んだ」
そうなったというのだ。
「そして今はアメリカにいる。そしてここで再会するなんてな」
「人間の一生はわからないですね」
「全くだ」
金は安本にしみじみとした口調で語った、そうしてだった。
二人で時間が許す限り話して連絡先を教え合った、その時から二人は再び交流をはじめた。しかし金は時々安本にまた日本に戻るかと言われたが。
彼はいつも俺はもうアメリカ人になったし生活基盤もここにあるからと断った、もそして終生ハワイで住んだ。生きている間日本と日本軍のことはよく語ったが韓国と韓国軍、北朝鮮軍のことは話さなかった。俺は日本に生まれ育った人
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