第二章
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「江戸時代の後期ね」
「相当離れてるんだね」
「一世紀半位違った筈よ」
三代将軍家光の頃から化政文化将軍にして十一代の家斉の頃からだ。
「それこそね」
「その間銭形平次はずっと生きてたのかい?」
「一世紀半もって仙人じゃないのよ」
銭形平次はとだ、裕香はすぐに言い返した。
「岡っ引きだけれど」
「そうだよね」
「普通にないから」
そこまで生きることはというのだ。
「百五十歳生きていたって人は実際にいるけれど」
「じゃあどういうことだろうね」
「物語と言ってしまえばそれまでだけれど」
裕香は母の言葉に微妙な顔になった、テレビの中の平次は十手を手にして快刀乱麻の活躍を見せている。
「それでもね」
「百五十年も生きてないね」
「三十一歳からだと百八十歳?」
「そんなに生きる人はいないね」
「鯨だといるけれど」
それでもというのだ。
「そこまで生きる人は知らないわ」
「じゃあ銭形平次は何なんだろうね」
「さっき違うって言ったけれど仙人じゃないの?」
裕香もこう言った。
「やっぱり」
「あんたが違うっていったのに」
「けれどそうとしか思えないじゃない」
そこまで生きているならというのだ。
「流石にね」
「そうだよね、何なんだろうね」
「ううん、何で時代が変わったのかしら」
裕香はその小さい口をへの字にさせて述べた、小さな口なのでそのへの字も随分と小さなものになっている。
「作者の考えにしろ」
「若し平次さんが百何十年も生きていたら」
それならとだ、雅子は裕香にこうも言った。
「私もそこまで生きようかね」
「百八十年も?」
「生きられるかね」
「流石に無理でしょ。百歳ならともかく」
それ位ならというのだ。
「それがね」
「百八十とかはだね」
「流石に無理よ」
人間の寿命の問題でというのだ。
「人間の定命は百十五歳っていうでしょ」
「そこまで生きられたらいいね」
「それで百八十歳はね」
そこまではというのだ。
「無理よ。それならずっと三十一歳の方がね」
「あるんだね」
「永遠の十七歳とかあるからね」
そこから何ヶ月となるのだ、裕香は冗談でこうしたことも言った。
「だからね」
「永遠の三十一歳でも」
「そう、江戸時代初期からのね」
家光の時代からだというのだ。
「それも有り得るでしょ」
「平次さんは凄いわね」
「本当に百八十歳だったら有り得ないわね」
徳川家光の頃から化政文化の頃まで生きていたのならというのだ。
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