第三章
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「耳たぶが切られたみたいになって」
「穴だけだったのがな」
「そこから血も出るし」
「一気にやられるから痛いだろうな」
「拷問じゃない」
それこそとだと思った。
「とんでもないじゃない」
「そんなことされた人もいるらしいんだよ」
「怖いわね」
「けれど相手がまだ何もわかっていない子供だからな」
「その時に注意しないと駄目ね」
「やられてからな」
耳にとんでもない傷をつけられてからだ。
「そうなるからな」
「だからなのね」
「ああ、それでな」
「耳にピアスはなの」
「あまりしない方がいいだろ」
「そうなのね」
「というかピアスって痛いだろ」
彼は怪訝な顔になって私に言ってきた、会社帰りに同棲している部屋に向かう途中の夜の電車の席に並んで座っている中で。
「穴開けたらな」
「それは」
「そんな思いまでしてしたいか?」
私に本気の顔で聞いてきた。
「そもそもな」
「お洒落だからね」
「お洒落で痛い思いするのかよ」
「それが女だって言えば」
「理解出来ないな、ピアスするならな」
それ位ならとだ、彼は私にこうも言った。
「ペンダントとかブレスレットとかな」
「そうしたのでなの」
「お洒落すればいいだろ、ブローチも髪飾りもあるし」
こうしたものでというのだ。
「お洒落すればいいだろ」
「それもそうかしら」
「そうだろ、まあどうしてもしたいっていうならば」
私がそう考えていればというのだ。
「すればいいけれどな」
「そうね、どうしようかしら」
私はこの時はこう返したけれど何かやる気がなくなった、それでだった。
この時も結局ピアスの為の穴を開けることはしなかった、そうして私は彼と結婚して子供も出来たが結婚したらもうピアスどころではなかった。
子供は最初は男の子で次は女の子だった、その娘に家でふとこんなことを言われた。
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