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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十八話 打診
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ろう。あれは制宙権の確保が有って初めて可能な作戦なのだ。
怖れる必要は無い……、しかし敢えて手の内をさらす必要もないだろう。むしろペイワードを、同盟を油断させた方が良い、いや油断させるべきだ。
「なるほど、ペイワード自治領主の懸念は良く分かりました。交渉はともかく、和平についてこちらも考えてみましょう」
ボルテックがこちらを見ている。見定める様な視線だ。俺が本心から言っているのか見定めようというのだろう。ココアを一口飲む、いかんな冷めてしまった、香りも消えている……。せっかくの美味しいココアが台無しだ。残りを一息に飲み干した……。
帝国暦 489年 3月 28日 オーディン フェザーン高等弁務官府 ニコラス・ボルテック
「いかが思われますか?」
「さて……、ケッセルリンク補佐官はどう思ったかな」
「あまり感銘を受けたようには見受けられませんでしたが……」
「まあ、そうだな」
感銘か、もう少し言いようは無いのだろうか……。この男の悪いところだ、どうしても物言いが少し皮肉じみた言い方になる。ルビンスキーにもそういうところが有ったが息子の方がより強く出るようだ。不愉快に感じたが苦笑する事で誤魔化した。
既にヴァレンシュタイン元帥は副官と共に宇宙艦隊司令部に戻った。今はルパートが俺の前に座ってコーヒーを飲んでいる。
「考えてみると言っていましたが……」
「言質は取らせなかった」
「はい」
ヴァレンシュタイン司令長官は考えてみると言った、それだけだ。交渉については何の約束もしていない。いや、それを言うなら帝国そのものが和平交渉については何の意思表示もしていない。国務尚書リヒテンラーデ侯はヴァレンシュタイン司令長官と話せと言っただけだった。
「自治領主閣下には何とお伝えしますか」
「ケッセルリンク補佐官、そのこちらを試す様な物言いは止めたまえ。あまり気持ちの良いものではない」
「申し訳ありません」
ルパートが殊勝な言葉を出して謝罪した。もっとも視線にはそんなものは感じられない。何処か不敵な色が有る。なるほど目は口ほどに物を言うか……。
「相手に不必要に警戒心を抱かせることになる、交渉者としては二流だ。ヴァレンシュタイン元帥を見習う事だ、彼には警戒していてもそれを緩ませるようなところが有る」
「……」
今度は無言で頭を下げた。やれやれだ、果たしてどこまで分かったか……。
宇宙艦隊司令長官は実戦部隊の責任者でしかない、本来和平交渉を云々する立場にはないのだ。現実はともかく建前ではそうなる。リヒテンラーデ侯はそこに話しを振った。そして司令長官も言質を与えない、その事をどう受けとめるべきか……。
つまり和平など論外という事だろう。適当にあやしておけと言う訳だ。あの二
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