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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十八話 打診
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を行った。常識的に考えれば馬鹿げた話だ、同盟にはそんな事をする余裕は無かった。本来なら要塞を中心に防御戦を展開するのがベストの選択だった。では何故あの馬鹿げた出兵が起きたか……。

軍内部での主導権争い、俺やフェザーンが扇動した所為でも有るが根本的には同盟市民の間に帝国領に攻め込んで一撃を与えたいという願望が有ったからだ。同盟市民の心には長い間攻め込まれ続けた事に対する鬱憤、いや怨念が有ったと思う、いつか必ず仕返ししてやると……。

たかだか十年の和平でその怨念が消えるだろうか? とてもそうは思えない、そしてシャンタウ星域の会戦では一千万近い同盟軍兵士が死んでいるのだ。その恨みが十年で消えるだろうか? 十歳で父親を失った子供は二十歳になった時その恨みを忘れる事が出来るのだろうか……。

「ペイワードも和平が簡単な事ではないと理解はしています。特に現時点では帝国が圧倒的に有利な立場にある。和平を受け入れるなど論外だと帝国の重臣方はお考えでしょう。しかしペイワードは和平は帝国にとってもメリットが有ると考えているようです」
「メリットですか……」
俺の言葉にボルテックが頷いた。

「帝国が同盟に攻め込むとなればイゼルローン、フェザーンの二正面作戦を実施する事になるでしょう。しかしイゼルローン要塞は難攻不落、フェザーン回廊も場所によっては大軍が役に立たない狭隘な場所も有る。場合によっては戦争が膠着化する恐れも有る……」
ボルテックが俺を見ている、なるほど俺が本当に宇宙を統一できるか確認しようとしている、そんなところか……。

「確かにイゼルローン要塞は難攻不落ですし、守将であるヤン提督は同盟軍一の名将です。その可能性が有ると考えるのは当然でしょうね」
同盟側は戦争の膠着化が可能だと考えているのだろう。主戦派がクーデターを考えたのは膠着化によって両回廊を守りきれると見たからだ。トリューニヒト達はそこまで楽観はしていない、いずれ押し切られると見た。だから和平をと考えている……。

「戦争が膠着化すれば今帝国内で行われている改革にも支障が出かねません。そうなれば帝国内には戦争に対して不満を持つものも出るのではないかとペイワードは心配しているのです」
「戦争の長期化ですか……。確かに望ましい事ではありません」

さて、どうする。同盟がイゼルローン方面に展開できる兵力は多くても二個艦隊だ。こっちが攻め寄せればヤンは要塞周辺で防御戦を展開せざるを得ない。ヤン・ウェンリーは厄介だがイゼルローン要塞は怖れる必要は無い。いざとなればガイエスブルク要塞をぶつければ良い。

ヤンがそれを防ごうとすれば艦隊を外に出して要塞のエンジンを攻撃するしかないが、その時にはこっちの艦隊でヤンを打ちのめすだけだ。エンジンを破壊する前にヤンの艦隊は火達磨になるだ
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