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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十八話 打診
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ろう。

「和平と言っていますが、ペイワード自治領主個人のお考えですか」
俺の言葉にボルテックは軽く首を横に振った。
「いえ、トリューニヒト議長の依頼によるものだそうです。もっともペイワード自身、和平を強く望んでいる事も事実です」
「なるほど……」

自由惑星同盟が和平に本腰を入れてきたという事か……。クーデター騒動で主戦派を潰した今こそが好機と思ったのだろう。そしてペイワードは帝国と同盟の間で和平が結ばれない限りフェザーンの独立は難しい事を理解している。両者の考えが一致した……。

ボルテックはどう考えているのかな。彼は俺がフェザーンを、同盟を占領し宇宙を統一するという考えを持っている事を知っているはずだ。ここで和平を提案してくると言うのは本気か? それともポーズか……。

「和平と言っても恒久的なものにはならない、一時的なものでしょう。自由惑星同盟が国力を回復するまでの一時しのぎ、せいぜい十年の和平でしょうね……。まあ一時的にしろ銀河に平和がもたらされるのは評価しますが同盟の国力が回復すればまた戦争になる。帝国にとっては何のメリットも無いと思いますが……」

ボルテックは俺の言葉を黙って聞いていたが、俺が話し終わるとコーヒーを一口飲んでから話し始めた。
「ペイワードはこう考えているようです。帝国は改革を進めている、劣悪遺伝子排除法も廃法になり同盟と帝国が対立する政治的要因は小さくなりつつあると。いまなら両国の間で和平を結ぶ事は可能ではないかと」

「なるほど……、ボルテック弁務官はどう思いますか? 和平は可能だと思いますか?」
俺の問いかけにボルテックは少し目を伏せ気味にして沈黙している。なるほど、さっきの発言もペイワードの考えとして話した、自分の考えでは無い、察してくれという事か。どうやらポーズのようだな……。

「……確かに政治的な対立点は減ったかもしれません。問題は感情でしょう、同盟市民、帝国臣民、これまでの多くの犠牲者を出してきました。その痛みを乗り越えて和平を受け入れられるかどうか……、難しいのではないかと私は考えています」

その通りだ、ペイワードは百五十年も戦争をしてきたという事実の重みを理解していない。所詮フェザーンで両国の戦いを傍観していただけの事だ、戦争の痛みを理解していない。

彼にとっては戦死者の数はただの数字でしかないのだろう。その数字の陰に家族を失った遺族が居るという事を理解していない。大体フェザーンには戦争孤児や戦争未亡人などいないからな、分からんのだろう。ボルテックはその辺りを理解しているようだ。多分帝国に居る事が大きいのだろう、身近に戦争で家族を失った人間を見ている。戦死者の数をただの数字とは受け入れられないに違いない。

イゼルローン要塞陥落後、同盟は帝国領へ大規模出兵
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