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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百四十八話 打診
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かな。レベロが推薦したと考えれば有り得る事だが……。
「閣下はシャノンを御存じなのですか?」
いかんな、ボルテックが俺を不思議そうな眼で見ている。妙な表情をしてしまったか。
「いえ、知りません。どのような人物です」
「私も詳しくは知らないのですが国防問題を専門としているようです。もっとも今回のクーデター騒動と無関係だったようですから主戦派と言うわけではないようです」
「なるほど」
国防問題を専門か……、やはりあのシャノンなのだろう。レベロの下で国防委員長を務めたという事はトリューニヒトとは距離が有ったと見ていい。軍事に詳しくても狂信者では無かった、現実を重視するタイプ、そういう事だな。まあレベロ政権下での国防委員長など主戦派には無理だろうが……。
「手強い相手のようですね」
「そう思われますか」
「少なくともヘンスローやオリベイラよりは手強いでしょう」
俺の言葉にボルテックが苦笑を洩らした、俺も笑い声を上げる。オリベイラはともかくヘンスローと比べるのは酷かったか……。なんせあれはフェザーンの飼い犬だった。餌付けしたのはルビンスキーと目の前で苦笑しているボルテックだろう。
もう一口ココアを飲んだ。ボルテックもコーヒーを飲んでいる。なんとなくまったりとした気分になった。どうも俺はボルテックが好きらしい、困ったものだが今のところ支障は無い、かまわんだろう。
気が付けばボルテックが困惑したように俺を見ていた。いかんな、俺はぼんやりとボルテックを見つめていたようだ。軽く笑いかけると向こうも口元に笑みを浮かべた。
「少しお疲れなのではありませんか」
「いえ、大丈夫です。ココアが美味しいのでつい寛いでしまったようです」
「それなら宜しいのですが……。ところで、同盟との和平についてですがお聞きになっておられますか」
「ええ、リヒテンラーデ侯から聞きました」
「リヒテンラーデ侯は司令長官閣下に相談するようにと仰られたのですが、閣下の御考えは」
「さて……」
さて、どうしたものか……。俺がこの話を聞いたのはフロイデンの山荘に居る時、つまり新婚旅行中の事だ。リヒテンラーデ侯曰く、“ボルテックから反乱軍との和平について打診があった。卿に任せるから適当に処理しろ”。一方的に喋って一方的に切った、それだけだった。何も映さなくなったTV電話の前で暫く呆然と座っていたよ。さっぱり分からなかった。全くあの爺、面倒な事は全部俺に投げやがる、少しは自分で片付けて欲しいもんだ。
まあ和平などあり得ないからな、俺に投げて十分と思ったのかもしれない。或いは和平の話題そのものが不愉快だったか……。門閥貴族を潰すために内乱まで起こした。全ては新銀河帝国を造るためだ。そう思えばリヒテンラーデ侯にとっては和平など聞くのも論外な話だ
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