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永遠の謎
468部分:第二十八話 逃れられない苦しみその十二
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第二十八話 逃れられない苦しみその十二

「あの方には多分にそうしたところがありますし」
「近頃昼におられることも少ないとか」
「では。やはり」
「あの方は」
「その御心を」
 何かおかしいのではないかという疑惑さえ出て来ていた。ゾフィーはこのことについて自失し閉じ篭る様になった。王もだ。
 王宮を去り黒の森の中で隠棲するかの如き有様となった。だからこそ余計にだった。
 彼等は疑惑を高めていった。王は何かが違うのではないのか、こう考えていったのである。しかしその中でだ。ビスマルクは。
 沈痛な顔でだ。こう周囲に漏らした。
「残念だ。しかしだ」
「しかしですか」
「予想されていましたね、首相は」
「わかっていたのだ」
 そうなることがだ。わかっていたというのだ。
「そしてあの方は今」
「バイエルン王ですね」
「あの方は」
「不覚傷ついておられる」
 そうなっているというのである。
「少し時間を置いてからお慰めの品を送ろう」
「バイエルン王にそうされるのですか」
「慰められるのですか」
「あの方を」
「ゾフィー様も傷ついておられる」
 ビスマルクは彼女についても言及した。
「しかしだ。あの方はさらにだ」
「傷ついておられる」
「そうなのですか」
「あの方の御心は一際繊細なのだ」
 その繊細さ故にだ。彼は王を気遣うのだった。
 彼もまた憂いのある顔でだ。周囲に話す。
「それが為にああなっておられたのだ。ならば私はだ」
「あの方を慰められる」
「そうされるのですか」
「あの方には」
 ビスマルクはさらに話す。
「あらゆることをしたい。それは」
「それは?」
「それはといいますと」
「私のしなければならないことの一つなのだろう」
 こうまで言うのだった。
「おそらくな」
「そこまでなのですか」
「閣下はあの方をですか」
「思われているのですか」
「そうだ」
 その通りだとだ。ビスマルクははっきりと認めた。
 そしてだ。さらに言葉を続けた。
「あの方を。人間としても」
「お好きですか」
「そうなのですか」
「私は入れないがだ」
 政治家としてそれはしない。公私はわかっていた。
 彼は政治家、プロイセンの首相だ。その意味で公である。
 公の人間としてだ。私情は入れなかった。しかしだ。
 彼はそれでもだ。私人としてもだというのだ。
「私はあの方が好きだ」
「左様ですか」
「あの方は」
「あの方を御守りしたいのだ」
 そうだというのだ。
「そうしたいのだ」
「では陛下、それでは」
「あの方を私人としてもですか」
「気遣われていますか」
「そうなのですね」
「あの方の素晴らしさはわかりにくい」
 彼にはわかる。それでもだというのだ。
 
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