467部分:第二十八話 逃れられない苦しみその十一
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第二十八話 逃れられない苦しみその十一
それをだ。今首相に言ったのである。
「ですが私にはどうしても」
「御結婚は」
「できないのです」
このことをだ。首相に言ったのである。
「どうしても」
「どうしてもですか」
「はい、私は女性を愛せない」
それならばだというのだ。王は。
「それで結婚をするのはその人に申し訳ありません。愛のない結婚は」
「意味がないと」
「そうです。婚礼は愛によってなるもの」
王のこの考えは君主としては相応しくない。しかしだ。
それでもだ。そこにあるのは。
「騎士はそうしたものですね」
「騎士道ですか」
「あれはメルヘンです」
実際にはないものだとだ。王はこのことも把握していた。
しかしだ。それでもなのだった。
王のその心にはだ。このことは存在していた。
それでだ。今言うのだった。
「ですがそのメルヘンがです」
「陛下は守られますか」
「そうしたいのです。ゾフィーへの想いは」
それがどういったものかもだ。王は把握していた。
では何か。王はこのことも話せた。
「妹に対する想いに似ています」
「妹君への」
「私には弟がいるだけですが」
今精神を病み幽閉されているだ。彼だけだった。
だがそれでもだ。実感としてだ。
わかるとだ。王は話すのだった。
「ですがゾフィーは妹と思っています」
「だからですか」
「私は彼女と結婚できません。ひいては」
「女性とはですか」
「結婚できません」
女性そのものとだ。結婚できないと話してだ。
そうしてだ。王はあらためて首相に話した。
「ですからこの度の婚礼はです」
「破棄されますか」
「正式にそうします」
こう言ってなのだった。王はだ。
国政において王を第一に補佐する首相に告げてだった。このことを公にしたのだった。こうしてこのことはだ。
瞬く間に広まった。バイエルンだけでなくだ。
ドイツ、ひいては欧州全体にだ。バイエルン王の婚約破棄は忽ちのうちに欧州における大事件となってだ。広まってしまったのだった。
各国の外交官達も貴族達も民衆もだ。唖然となりそれでいて何処か納得してだ。そのうえでこのことについて話をするのだった。
「まさか、いややはりか」
「そうですな」
「どうも様子がおかしかったですし」
「こうなるのも道理ですか」
「バイエルン王は女性を愛せないのですから」
「ですから」
そのことからだ。これは当然だと話されたのだ。
だが、だ。それでもだ。
彼等はだ。こう話をするのだった。
「しかしそれでもですぞ。あの方は王なのです」
「そうですな。バイエルン王です」
「王なら生涯の伴侶が必要ですな」
「御后様が必要です」
「それはどうしてもです
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