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永遠の謎
465部分:第二十八話 逃れられない苦しみその九

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第二十八話 逃れられない苦しみその九

「それをどうして否定できるのか」
「排除すればドイツは統一されません」
「そのことがわかっていないのです。ドイツは統一されるべきです」
 ひいてはだ。そうなることだった。
「それがわかっていないのは」
「嘆くべきことです」
「私はです」
 首相を見てだ。そうしての言葉だった。
「卿を罷免しません」
「そうして頂けるのですか」
「卿はバイエルンにとって」
 ひいてはだった。さらに。
「ドイツにとって必要な方です」
「そう言って頂けるのですね」
「はい」
 その通りだというのだ。
「今、プロイセンに反発しても何もなりません」
「かえってバイエルンの立場を悪くするだけです」
「今必要なのは」
 それは何なのか。王はこのこともわかっていた。
「バイエルンがドイツに入り。そして」
「そのうえで」
「卑屈にはならないことです」
 誇りを護る、それが重要だというのだ。
「私は卑屈は嫌いです」
「あくまで胸を張りプロイセンとですか」
「協調します」
 そうすると。王は今首相にはっきりと述べた。
「それが私の考えです」
「では」
「安心して下さい」
 ここで王は首相に微笑んでみせた。
「私は卿を解任せず」
「そしてですか」
「プロイセンに対してもです」
「このままですね」
「確かに協力はします」
 このことは変わらない。変えられない。
 しかしだ。それと共にだった。
「ですが膝を屈しません」
「敬礼だけですね」
「口調も変えません」
 あらゆることをだ。変えないというのだ。
「そうしていきます」
「そうです。そうあるべきなのです」
「そしてビスマルク卿も」
 彼のことはだ。ここでも念頭にあった。プロイセンといえば彼である。王だけでなく欧州の誰もがプロイセンと彼についてはこう認識していた。
 だからだ。王も彼の名前を出してだった。
「それがいいとわかっておられます」
「バイエルンがそうした態度でいることを」
「ひいては私が」
 王がだ。そうした姿勢でいるということもだ。ビスマルクはよしとしているというのだ。
「人は卑屈な相手にはどうするか」
「軽蔑しますね」
「卑屈、誤魔化しは正しいことではありません」
 騎士の顔でだ。王は話した。
「嘘偽りもまた」
「だからこそですね」
「私はこのままでいます」
 プロイセンに対する態度もだ。そうするというのだ。
「正面を見てそうしてです」
「対されますか」
「戦いはしません」
 そもそもだ。王は戦いを好まない。
 だがそれでもだ。動かないというのではなかった。むしろ。

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