97話:上昇と下降
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も得られようし、命名が殿下ともなれば傷をつける訳にもゆくまい?』とニコニコしながら言われまして......。私の座上艦の命名をお願いできればに存じます」
「それは光栄なお話ですわね。伯なりの婚約祝いも少し含まれているように思います。婚約者の座上艦を命名するなんて素敵な話ですわ。喜んでお受けいたします」
そこからどんな艦なのかという話になったが、実物はまだ建造中だし、内装は私の好みに合わせて特注される手筈だ。完成予想図や設計コンセプトを話しながらお茶を楽しむ。俺はともかく、皇女殿下は楽しんでおられるのだろうか......。心配気だったのが伝わったのだろうか?
「私の代わりに、ラインハルト様を戦場で守ってくれる貴婦人の事ですもの。しっかり把握しておきたいですわ。どうせなら完工式には私も参加したいと存じます」
確かに命名して頂く以上、完工式にも参加していただく必要があるだろう。これも少しでも一緒の時間が取れるようにと言う、伯のご配慮なのだろうか?内戦が起こる以上、今のうちに叛乱軍を少しでも叩いておく必要がある。年明けにはまた出征することになるだろう。
そこで気づいたが、おそらく皇女殿下も内戦終了までは、2人でゆっくりとした時間を取る事が難しいと理解したうえで、少しでも良い時間にしようと明るく振る舞ってくれているのだろう。年下の淑女の配慮に今更気づくとは、俺もまだまだだ。
「皇女殿下にはご配慮頂きありがとうございます。ケーキもとてもおいしゅうございました。味が姉の物に似ていて驚いたほどです」
「ラインハルト様が慣れ親しんだ味に少しでも近づけたかったので、とても嬉しいお言葉ですわ。少しでも寛いて頂きたかったものですから......」
恥ずかし気に殿下が一旦はなしを区切り、お茶を飲まれる。ほのかにバラの香りが鼻孔をくすぐる。この場で、私たちの後見人が決まった。その場にいた2人の淑女には『歴史的な一幕』に立ちあったような印象があるらしく、お茶の席ではよく話に出たものだ。
「ブリュンヒルト、命名はブリュンヒルトがよろしいと思いますわ。旧世紀の神話の『楯の乙女』から頂いたものですが、如何でしょう?」
「ブリュンヒルトですか、良き響きです。そのお名前を頂戴したいと存じます」
姉上のように俺を気遣って、帰りを待ってくれる殿下の為にも、より一層は励もうと思う。もちろんなるべく心配をかけないようにするつもりだ。それにしても『ブリュンヒルト』か。良い響きだ。伯にも命名頂いたことを早く伝えておかなくてはなるまい。
宇宙歴796年 帝国歴487年 1月上旬
首都星ハイネセン 統合作戦本部
ラザール・ロボス
「ロボス大将、右派がこれまで貴方の派閥に所属する人材をなにかと優遇してきたのも、『戦勝』を期待しての事で
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