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カブソ
第三章
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「もう七十年の間ね」
「そんな調子なの」
「二リーグ制になって数える位しか優勝してないのよ」
「確かシリーズに出たの六回?」
「そのうち日本一は一回よ」
「少ないわね、さっき名前出したホークスと比べて」
「あっちは二十一世紀だけでシリーズ六回は出てるんじゃない?」
 麻友はざっと頭の中でホークスの優勝の数を数えて述べた。
「それだけで」
「それ位出てるわよね」
「それも常に日本一だからね」
「阪神は二十一世紀になって一度も日本一になってないのに」
「万博は花博と新世界の入れて四回なのに」
「阪神の日本一は一回だから」
「ある意味凄いわね」
「凄い歴史よね」
 よくない意味でと話す二人だった、話しながらたこ焼きを食べて飲みもののペットボトルのみっくちゅじゅーすを楽しむ。
 飲んで食べた後はまた歩く、そしてドンキホーテの下の川辺に来て今度は葵から麻友に対して言った。
「ここはずっと吉本と阪神カラーだったのかしら」
「吉本は今薄いけれどね」
「昔は外国からの人少なかったのはわかったけれど」
「蟹に河豚に悔いたおれのおじさんにね」
「エイリアンもあって」
 看板であるのだ。
「あとお好み焼きにたこ焼き」
「引っかけ橋もあってね」
 ちゃらい男に声をかけられたのはあしらっても橋自体は頭に入っている。
「それでグリコもあって」
「いつもお店と人で賑やかで」
「そんなのだったのかしら」
「ずっとね」
「ほう、ここに興味があるんやな」
 ふと大人の女の色気のある声がしてきた。
「感心な娘達やなあ」
「っていうと」
「その声は」
「初対面やな」
 長い烏の濡れ羽色の腰までの波がかった黒髪と猫の様な目、口元も猫に似ている。小柄で背は二人より二十センチは小さい。艶やかな赤い和服にパラソルに下駄という戦前の女性を思わせる恰好である。年齢は二十代後半か。
 その女性がだ、二人に言ってきた。
「そやな」
「ええ、まあ」
「初対面ですね」
 二人も女にその通りだと答えた。
「お姉さんとお会いするのは」
「そうですよね」
「そやな、まあうちは大阪に長く住んでるけど」
 女は二人にくすりと笑って答えた。
「この道頓堀にな」
「あっ、そうですか」
「ここにお住まいですか」
「そや。それで二人共ここの話してやろ」
 女は二人にあらためて尋ねた。
「そやな」
「はい、吉本とか阪神とか」
「あとお店のこととかも」
「ここはこうなったんや戦争が終わってからや」
 女は二人に微笑んで話した。
「それまではな」
「違ってたんですか」
「そうだったんですか」
「そや。空襲もあったしな」
 日本のあらゆる街がこれを受けた、それは大阪も例外ではなかったのだ。
「それでや」
「一回焼けて」
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