§5 課題山積みの魔王
[2/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
気にしなくてすむ。ソニックブームを起こさないギリギリの速度で気配を強く感じる方向へ。状況が掴めない今、権能の発動は抑える必要がある。移動は自らの足で行った方が安全だろう。
「まぁ、順当に考えれば今ドンパチやってるのは護堂とアテナかな」
護堂が何の神の権能を簒奪したのか、黎斗は知らない。しかし最近と聞いているので、おそらく一柱。果たしてあの女神を倒せるのか。黎斗は否と考える。彼女は新米のカンピオーネの相手にしては強大すぎる。手負いだったとはいえ、複数の権能を持っていた黎斗ですらかつてはあの女神を前に逃亡を余儀なくされたのだ。
「……まぁそういった考えをガン無視して倒すからこその神殺しではあるんだけどさぁ」
「あの金髪の女の子も、かなりの手練れだと思います。アテナ様が本気で挑まない限り、あの方々は敗北なさらないでしょう」
アテナ。昨日すれ違ったときのあの違和感はいったい何だったのだろう?今でこそ感じられないが、あの時感じた妙な気配が気になる。エルと会話しながらも黎斗の焦点はそこにあった。
「会って、確かめるしかないか」
黎斗は足の裏に魔力を込め、跳躍。この事件の火消しに奔走しているらしい人間達(役人なのだろうか?)を眼下にひと息で越える。電柱の上を跳ね、ビル群を易々と飛び越え、壁を垂直に爆走する。その速度、方法共に常軌を逸していた。
故にエルは思う。特撮物の撮影と誤解されかねないこの非常識な行動。もしかしたら認識阻害をする必要はないのではないだろうか。この光景を見た人間全てが自分の目を疑い、まばたきをする頃には黎斗はもうその場にはいない。よって彼らは自らが見た光景を目の錯覚として処理するだろう。
更に黒いコートを羽織っておりご丁寧にフードまでした黎斗の顔を見ることは至難の技だろう。術者にしたところで黒コートの怪人、という認識で済むような気がする。黎斗=黒コートの怪人、と推測するのは厳しいだろう。わざわざ認識阻害なぞしなくてよい、と。
黎斗曰わく警察の能力を舐めたら足下をすくわれる、らしいが本当に黒のコートという手がかりだけで犯人を絞れるものなのだろうか。生のほとんどを幽世で過ごしてきたエルにはそこの感覚がわからなかった。必要ないと思い話して、それでもなお主が必要と判断したということは、きっと必要なのだろう。エルには強引に納得する他はない。間抜けでアホでどうしようもないが、それでも危機管理は一級品だ。これまで生きてきた年月が証明している。自らのマスターに全幅の信頼を置いている理由など、それだけで十分。
「……認識遮断、もうワンランク上げるよ」
「マスター、わざわざそこまでなさらなくても」
それにしたって警戒しすぎな気もするけれど。
「こっから先にいる術者はそ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ