§5 課題山積みの魔王
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「あれ?」
「……マスター、暗い中でそんなことすると目が悪くなりますよ」
「うん…… っーかテレビつかない……」
無人の部屋に帰宅した黎斗。「ただいまー」と虚しく声を響かせつつ彼は首を傾げて尋ねる。
「エルー? ブレーカー落ちてる?」
「んなもん私にわかるわけないじゃないですか。マスター調べてくださいよ」
このアパートはブレーカーが台所の上にある。そんな高いところにあるのだから、キツネであるエルに判別できないのはしょうがない。
「やれやれ……」
ブレーカーは落ちていない。となれば、停電か。窓の外も、軒並み真っ暗だ。視界を魔力で増強しなければ歩くことすらままならない。
「停電とかついてないなぁ……」
静寂が支配する闇の中、突如携帯電話から軽快なテンポの曲が流れ、暖色系のランプが点灯した。深紅のランプは恵那のものだ。
「エル、恵那からメール。今日明日は合宿だって。言うの忘れててゴメン、だと」
恵那としても黎斗のアパートに住み込むことが決まったのも突然だったわけだし連絡を忘れるのもしょうがないか。ちゃんと連絡くれただけ御の字だと黎斗は彼女に感謝した。
「恵那さん今日は居ないんですか…… やっぱり少し寂しいですね」
恵那が居れば停電して暗い雰囲気でも明るくしてくれたかもしれない。そんなことを思いつつ再び外に意識を向け、彼はようやく気がついた。
「ははっ…… ホント情けないなこりゃ」
思わず自嘲してしまう。
「? マスター?」
こんなにも、明確な気配を見逃していたことに。
「エル、外の気配、探ってみ」
呪力、魔力、神力の濃厚な気配。かなり、いや、すごく強い。意識を研ぎ澄ませれば圧倒的な死のオーラを感じ取れる。
これに今に至るまで気付かなかった自分は本当に平和ボケしすぎている。
「……!?」
絶句するエル。
「明日から二人。仲良く修行ね」
「そうですね…… 正直、鈍りすぎてて笑えません……」
索敵がこれだけ出来なくなっていると、黎斗にもし「流浪の守護」が無ければ、つまり相手に対し絶対的な隠密能力を持っていなければ。相手に容易く奇襲を許してしまいかねない。
決意してから数時間と経たないうちにこの有り様。まったくもって、笑えない。
だが、今は反省している場合ではない。
闇の中目立たないように紺色の服とジーンズに着替え、更にその上からバレないように冬物の黒いコートを羽織る。エルを肩に飛び乗らせ扉をしっかり施錠する。防犯は大切です。準備万端。監視の目が無いことを一応確認し彼は夜空へ飛び立った。
認識阻害と消音。二つの術をかけた黎斗は、忍者よろしく屋根の上を疾走する。消音の呪のおかげで、音は
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