アインクラッド編
20.桜
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
「お花見をしましょう」
彼が亡くなった日から一週間後の朝。
そう言ったのは、クリスティナだった。
急に言われたので、俺も含め全員が戸惑ったようにクリスティナを見る。クリスティナは微笑んで、もう一度言う。
「前に、みんなでやろうって言ったじゃない。そろそろ見頃よ。お花見をしましょう」
「クリス・・・でも」
ミーシャが言いよどむ。彼女の言いたいことはよくわかる。リヒティが亡くなってから、まだ一週間だった。正直、そんな気分になれないのはクリスティナが一番よくわかっているはずだった。
そんな思いを見透かしたかのように、クリスティナは言った。
「リヒティがやりたいって言っていたもの。やって欲しいの。彼のために」
「・・・そっか、そうだね。ナツ!」
「あ、ハイ!」
「お弁当頼んだよ!私たちも手伝うから!」
「了解っス!」
ナツがびしりと背筋を伸ばして叫んだ。
「タクミ、アルト!敷物買ってきてね!」
「分かった」
「了解」
椅子を鳴らし、俺たちは同時に席を立った。
町に出て敷物を探しているとき、俺は何も話せなかった。タクミも黙り込んでいる。
事件の直後、俺はタクミに怒鳴られている。あのタクミに、である。その時から、俺たちの間には微妙な空気が流れている。
明らかな人選ミスだ。やはりミーシャは動揺していたのだろうか。
だが、このまま黙っていても埒が明かない。俺は意を決してタクミと話をしようと試みた。
「タクミ」
「ごめん、アルト」
驚いて、俺はタクミを見た。タクミは少し目を伏せる。
「君が何の考えもなしにどこかに行くはずがなかった。頭が回っていなかった。ごめん」
「いや、説明しなかったのは俺だ。こっちこそ済まなかった」
「ん」
微かに、タクミは笑った。つられて俺も少しだけ頬を緩ませる。そこでようやく気付いた。ミーシャの人選は、間違っていなかったのだと。
タクミと俺が選んだ敷物を桜の前に敷き、ナツが腕によりをかけて作ったお弁当を並べた。桜の根元には、リヒティのメイスが立て掛けられている。
ナツの作った弁当の味はさすがの一言だった。この前買い込んだ調味料もさっそく使っているようで、得意げにクリスティナに説明している。
しばらくぼんやりと桜を眺めながら弁当を食べていると、ミーシャが隣に座った。
「ありがとね、アルト」
「何がだ?」
「リヒティのメイス、取り返してきてくれたんでしょう?」
「あぁ・・・それか。あれは別に、俺が勝手にやっただけだ」
「そう言うと思った」
もう、とミーシャは頬を膨らませる。しかしすぐに表情を崩し、どこか切なげな笑みを浮かべた。
「危ないことを、一人でやらないで。もっと頼ってよ。私たちがいるんだから」
「・・・済まない」
「分かったならよろしい」
リ
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ