46部分:第三話 甘美な奇蹟その十一
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第三話 甘美な奇蹟その十一
民主化が進んだ。そしてその中でワーグナーは急進的な思想の下民衆を先導した。それを罪に問われてだ。彼は今も追われているのだ。
そしてだ。王はその彼について言うのだった。
「このことは前にも言った筈だが」
「それはそうですが」
「しかし真だったのですか」
「そのお考えは」
「そうだ、真だ」
まさにそうだというのであった。王はだ。
「わかったな。ではワーグナーをだ」
「その罪はいいのですか」
「バイエルンにおいてもその罪を問われていますが」
「それもまた」
「すぐに消す。そして」
さらに言う王だった。
「他の国にも伝えてくれ。もうワーグナーの罪は問わないようにとな」
「一人の、しかも人を殺めていないならばすぐに罪は消せますが」
「このバイエルンの力ならば容易です」
「それはです」
バイエルンはその程度の力はあった。しかしだと。周りの者は言うのであった。
「それをワーグナーに使われますか」
「あの男に」
「ワーグナーだからこそ使うのだ」
王は彼だからこそと言った。言い切った。
「それをだ」
「そこまでの者だと」
「あのワーグナーは」
「わからないのか、あの音楽はだ」
王の言葉は次第に恍惚となってきていた。そのワーグナーの曲を聴いている時の様にだ。
「あれだけの音楽を見せる者が今このドイツにいる奇蹟を」
「奇蹟」
「そこまでなのですか」
「彼の存在は」
「そうだ、だからだ」
また言う王だった。
「ワーグナーを救う。そして」
「そして」
「このバイエルンにですか」
「そうだ、この国に来てもらう」
真剣な言葉だった。嘘なぞ全くなかった。
「わかったな」
「は、はい」
「それでは今から」
「そのワーグナーをですね」
「しかし殿下」
ここでだった。一人が言うのだった。
「問題はそのワーグナーの居場所です」
「何処にいるのでしょうか」
「一体」
「まずは探さないといけないのですが」
このことが問題なのだった。何しろワーグナーは今はお尋ね者なのだ。
「このドイツにいるかどうか」
「それが問題です」
「どの国にいるのか」
こう話していく。
「陛下、まずはそれからです」
「暫く時間がかかりますがそれでもいいですか」
「彼を見つけるまでにも」
「構わない」
いいというのだった。
「とにかく見つけ出してそしてだ」
「ミュンヘンにですね」
「この街に」
「屋敷も用意しなければならない」
王は既にこのことを考えていた。ワーグナーについてだ。
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