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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
――だから、今は。今だけは。
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「イッツ・ショウ・タイム」

 男の言葉が、降りしきる雨粒を瞬時に凍りつかせたかのようにマサキには感じられた。しかし、オレンジたちは男の言葉に浮かされたように咆哮を上げ、我先にと飛び込んでくる。マサキは蒼風を構えようとしたが、かじかんだ指先を動かすまでにほんの僅か生じたラグによって反応が遅れた。

「マサキ!」

 声と共に大剣が振り上げられ、一番槍を狙った湾刀(タルワール)使いは衝撃で草原と森の境目まで吹き飛んだ。

「油断するなっつったのはそっちだろ?」
「……ああ。分かってる。助かった」
「お、今日は素直だ」
「喧しい!」

 からかって笑うトウマを怒鳴って走りだす。ちょうど正面にいた短剣使いを見据えると、体を沈みこませて力を溜め、フルスロットルで回転するスクリューの如く土の上を覆っていた雨水を弾き飛ばして加速する。

「え? ……って、ぐあぁっ!?」

 それまでも十分高速で走っていたのだ、更に上があるとは相手も思っていなかっただろう。その意表をついて一瞬の隙さえ生まれれば、マサキにとっては十分だった。リーチの差も利用して短剣使いの肩口に蒼風を突き込み、胸板を踏みつけて飛び上がる。空中で腰を捻り、力一杯横薙ぎに蒼風を振るいながらその刀身を敵の集団へぶつけるようにイメージ。すると蒼風の刀身が解れ、暴風となって頭上から《ラフィンコフィン》と名乗った集団に襲い掛かった。風刀スキル《神渡し》。ダメージこそないが、雨粒を伴った暴風を真正面から叩き付けられた集団の動きが一様に止まる。
 マサキの眼下を黒い弾丸が翔けた。姿勢を低くし、オレンジの尾を引いて敵の中心に突っ込んだトウマは、次の瞬間己の力と運動エネルギー全てを大剣に乗せ叩き付けた。両手剣重単発技《レディアルクラッシュ》。ずしんと地が震えると同時に土煙が巻き上がり、何人ものプレイヤーが放射状に吹き飛んだ。このソードスキルの長所は威力や範囲だけではなく、吹き飛ばした相手を確率でスタン状態にできるところだ。事実吹き飛ばされたプレイヤーは一部が立ちあがることすらままならず、スタン状態に陥らなかった者も空中を何回転もしながら飛ばされた果てに地面に叩き付けられたため、酩酊感でまともに動けてはいない。
 これで少なくとも下っ端であれば複数を同時に相手しても優勢以上で立ち回れることがはっきりした。ならば、次は頭を狙う。この狂った集団を瓦解させるには、あの中心にいるポンチョの男を撤退に追い込む以外にないとマサキは考えた。
 着地したマサキは、黒ポンチョの脇に控えるように立つエストックを持った男に踊りかかった。そして細身の刀身同士が打ち合わされる寸前に身体を捻り、横のポンチョへ刃を向ける。しかし、流石にこの男はそこいらの下っ端とは腕が違った。フェイントからの急襲を、男はさも予期してい
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