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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
――だから、今は。今だけは。
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ンジであったり、五十層のフロアボス攻略戦で死亡した、先ほど戦ったジュンのギルドメンバーたちであったりと人物像は様々だが、辿った過程は皆一様だった。
 アインクラッドで死亡したプレイヤーは、まず人形が生者に成り代わってしまったみたいに表情が動かなくなる。その後身体中にノイズが走り、全身がアクアマリンで出来た彫像のようなポリゴンの集合体になって、最後は砕けて消える。これからエミもそうなるのだと考えたら、もう全てがどうにでもなってしまえばいいと思えた。いっそ、現実世界で天変地異が発生して、SAOのサーバーが丸ごとオシャカにでもなってしまえば諦めだってつくのかもしれない――いや、それも無理か。
 そら見ろ、と、自分に笑われたような気分だ。トウマが死んで、繋がりを失うことの恐ろしさを知ったはずなのに。五十層のボス討伐戦で、繋がりを求めることの愚かさが身に染みたはずなのに。また性懲りもせずに手なんか伸ばすからだ。記憶力の良さが聞いて呆れる。
 ああ……そうだ。最初にもっと強くエミを拒絶していれば、彼女は今こんなところにいなかった。彼女の容姿と魅力なら、友人も恋人も、幾らだって作れただろう。それが自分である必要なんてないし、そうなりたいとも思っていなかった……少なくとも、最初のうちは。しかし好意を寄せられる心地良さに負け続けたから、エミはここで死ぬのだ。その後にマサキも殺されて、それで全てが終わる。もう、誰かを求めることもないだろう。

「……マサキ、君」

 頭上から声が降って来た。何度も聞いた、美しいソプラノ。しかし、もうその出所へ顔を向ける気力もなかった。次は何と言うのだろう? 罵倒だろうか。それとも、こんなにも無様な自分をまだ信じて、助けを求めるだろうか。
 ああ……。どちらも嫌だな。このまま耳を塞げたら、きっと、それが一番楽だ。麻痺毒で手が動かないからそんなことさえできない。これが因果応報ってやつか。

「わたし……、後悔、してないよ」
「え……」

 彼女の放つ言葉がマサキには良く分からなかった。勿論単語の直接的な意味は理解できるが、それらを繋ぎ合わせて彼女が何を伝えようとしているのかが分からない。日本語に類似した全く別宇宙の言語を聞いているような感覚。
 マサキは反射的にエミの顔を見上げた。言葉だけでは分からないことも、相手の表情を見ればより細かいニュアンスが伝わりやすくなるだろうからという理屈。その途中でマサキは、エミがこの窮地を脱する秘策を持っているのではないかという希望的観測を抱いたのだが、そんなものは彼女の顔を一目見て間違いと分かった。

「マサキ君を好きになったことも、ここに来たことも……何も、後悔してないから。もし来世とか、そういうのがあったとしても、わたしは同じようにマサキ君を好きになるよ。だから……ね? そんな
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