アインクラッド 後編
――だから、今は。今だけは。
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たかのように最低限の動作で得物を蒼風の軌道上に割り込ませて防いでみせた。男の武器は大振りなダガーで、リーチこそ短いものの、下手をすれば蒼風よりも重量がありそうだった。形こそ特別なものではなかったが、軽さと取り回しのよさを第一に挙げるダガー使いたちからは敬遠されそうだとも思える。
「チッ!」
舌を打つマサキの肩を手のひらが強い力で押し下げる。マサキの僅かな筋力値では到底耐えられず膝をつくが、決して取り乱しはしない。これまでに何度も経験しているのだから。
「オラァッ!」
肩に置かれた手が一際強く押し付けられ、マサキの身体をブラインドにして接近していたトウマが前向きに空中で一回転しつつマサキの前に出、着地と同時に大剣を振り下ろした。次に聞こえた舌打ちはポンチョ男のものだ。男は大剣の一撃をかわしバックステップで距離を取る。
「テメェ、調子付いてんじゃねぇぞコラァ!」
その瞬間、左右から先ほどのエストック持ちと、もう一人、髑髏のようなマスクを被ったダガー使いが同時に襲いかかってきた。マサキは瞬時に左へ跳び、勢いのまま髑髏マスクに飛び膝蹴り。衝撃で反り返った胸板を蹴って逆方向に跳ぶ。身体を捻りながら眼下を見ると、大剣で器用にエストックを弾き上げたトウマが右手の拳を握り締めたところだった。
「――せいッ!」
「うらァッ!」
マサキがエストック使いに、トウマが髑髏マスクに、相手を入れ換えてそれぞれ蹴りとパンチを見舞うと、二人のオレンジは逆方向に転がっていく。それを横目に、マサキたちは頭目の黒ポンチョに追いすがった。
「ヒュゥ、こいつはExcellentだ。まさかここまでの連携ができる二人組がいるとはな」
「お前如きの冥土の土産には過ぎた品だがな!」
マサキが飛び込んで突きを放つが、ポンチョはそれをひらりとかわし更に交代。その時にフードから覗く口角をあからさまに持ち上げるのが実に憎たらしいが、そんなことで苛立ってはいけないと己を諌めつつ更に追いかける。いつしか草原を外れ、戦場は針葉樹林に変わっていた。
トウマとスイッチを繰り返し、手を休めることなく攻撃を加え続ける。その中で、次第にマサキの脳内では「この戦闘をどのように終わらせるか」という思考が徐々に比重を占めてきていた。こちらとしては、別にわざわざ敵を全滅させる必要はない。足の遅いトウマを連れての離脱が難しかったために今までは戦闘で相手を撤退に追い込むという手段を取っていたが、ここまでの戦闘経過で敵の集団からは離れつつあり、目下の敵はポンチョの頭目一人だけ。であれば、どこかのタイミングでトウマを結晶で離脱させられればいい。マサキが一人で逃げるだけなら、マサキの足があればどうとでもなる。
そんな時、トウマが繰り出した斬り上げをかわすため、ポンチョ
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