第二章
[8]前話 [2]次話
「いや、実はうち臨済宗だけれど」
「仏教の禅宗ですね」
「しかも叔父さんが住職さんでね」
その臨済宗のというのだ。
「法事とか真面目にやってるんだよ」
「そうですか」
「けれどね」
それがとだ、笑って話す店主だった。薄くなった髪の毛には白いものも混じり眼鏡が実によく似あっている痩せた顔である。
「この季節は」
「クリスマスですか」
「店をそうして飾るんだよ」
「そうされてますね、実際に」
「それはな」
まさにと言うのだった。
「あれだよ、周りの店が全部だろ」
「クリスマス一色になるので」
「もう自然にな」
宗教の違いはどうでもよくてというのだ。
「先代か先々代からな」
「十二月はクリスマスですね」
「そうなってるんだよ、ツリーだって売るしな」
クリスマスといえばこれだというものもというのだ、実際に商品にはしっかりとクリスマスツリーもある。
「もう宗教とかな」
「特にですか」
「考えてないな」
仏教への信仰には熱心でもというのだ。
「お釈迦様でもな」
「こうしたことはですね」
「特にな」
意識せずにというのだ。
「皆やっててな」
「こちらのお店でもですね」
「この通りだよ」
「クリスマスですね」
「そりゃお寺や神社はならないさ」
流石に他の宗教の場所はだ。
「クリスマスにはな、けれどな」
「そうした場所以外は」
「この通りさ、うちもその中の一つって訳だ」
「日本の中の」
「そういうことさ、それじゃあな」
「はい、今日です」
シスターは店主にあらためて話をした、今日この店で買うものの話をだ。そうしたことも話してだった。
実際にものを買って街を歩いて教会に戻る。教会の中もクリスマスに向けて動いているが世の中とは違って。
静かなものだった、ツリーは出していても自己主張はしていない。いつも通りの状況と言ってよかった。
それでだ、シスターは教会に戻って神父に話した。
「クリスマスでも」
「教会と他の場所ではですね」
「全く違いますね」
「そうなのですよね」
今は教会に来た人の懺悔を受けたのを終えた神父が応えた。
「クリスマスとはです」
「本来は」
「静かなもので」
「静かに神を祝福する」
「讃美歌を歌い」
そうしてというのだ。
「主の生誕を祝福しますが」
「それが、ですね」
「どうもですね」
「大抵の国でもそうなっていますが」
「我が国も然りで」
「信仰よりも賑やかさ」
商売、遊び、そうしたものがというのだ。
「そちらになっていますね」
「そうですね、ですがそれでも私はです」
「この時期がお好きですね」
「常にお話している通りです」
ここでも微笑んで話す神父だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ